少年漫画やそれを原作としたアニメといえば、主人公が味方とともに強敵を倒すというのが王道展開のひとつだ。彼らが苦難や困難に見舞われながらも成長していく姿に、読者は心打たれる。
しかし、中にはパッと出てきた敵に主人公や最強キャラがあっさりとやられてしまうという驚きの展開が描かれることも。今回は、最強だったキャラの負けシーンをいくつか紹介していこう。
■『ろくでなしBLUES』前田太尊
まずは、1988年に『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった、森田まさのり氏によるヤンキー漫画『ろくでなしBLUES』だ。男子高校生たちのケンカやボクシングをテーマとした本作は、手に汗握る熱き戦いやそこから生まれる友情など惹き込まれる要素が多く、爆発的な人気を博した。
本作で圧倒的な強さを誇るのが、吉祥寺の前田・渋谷の鬼塚・浅草の薬師寺・池袋の葛西から成る「四天王」だ。当初はボクシングに覚えのある主人公・前田の強さが際立っていたが、最後に登場した葛西によってその印象が一気に覆る。
「四天王」に嫌悪感を抱いていた葛西は、他3人へ殴り込みをはじめた。鬼塚はそのシーンの直接的な描写は無いが、アバラ7本と腕1本が折られている。前田との喧嘩の影響もあって万全の体制ではなかったが、勝てる相手ではなかっただろう。
薬師寺とのタイマンで葛西は、薬師寺の回し蹴りを軽くかわして「何だ それ」とタバコをふかし、恐ろしいまでの強キャラ感を見せた。十八番のアバラ折りで完膚なきまでにボコボコにされた薬師寺は、「かんべんしてくれ」と負けを認める。
前田とのタイマンでは、葛西を止めてくれと頼みこむ友人・坂本の登場も相まって、前田の勝利フラグが立ったと思われた。が、葛西はライトクロスカウンターをいとも簡単に使いこなし、前田の強烈なアッパーも咥えタバコすら落とさずに耐える。
そこからは葛西のターンであった。後ろ回し蹴りや、驚異的なスピードで繰り出すパンチで一方的に攻められ、前田は手も足も出ず完敗。向かうところ敵なしだった主人公があっさりとやられるこの場面は、「ろくブル」の中でも印象的なエピソードだろう。
■『グラップラー刃牙』愚地克巳
板垣恵介氏の『グラップラー刃牙』に登場した愚地克巳も忘れられない。『週刊少年チャンピオン』にて1991年から連載がスタートした今作では、主人公である範馬刃牙を中心に、格闘技に魅せられた男たちが熱い戦いを繰り広げていく。
地下闘技場最大トーナメントに出場した愚地克巳は、巨体・俊足・怪力という恵まれた体を持ち、神心会総帥・愚地独歩の養子として空手の英才教育を受けてきた。「空手界の最終兵器」との異名を持つ天才である。
そんな愚地克巳のあっけない幕切れは、3回戦、中国拳法を操る烈海王との戦いで起こった。試合開始直後、気持ちが大きくなっている克巳は敵に対して軽口を叩くが、隙を突いた目潰しを受けて先制を許してしまう。
慌てて繰り出した「マッハ突き」は烈海王にダメージを与えられず、それどころかカウンターを喰らい観客席まで吹き飛ばされる。2回戦で強敵の花山薫を打ち破る強さを見せていただけに、時間にすればわずか数秒のこの瞬殺劇は衝撃的なものだった。
「キサマ等の居る場所は既に―― 我々が2000年前に通過した場所だッッッ」のセリフもまた、烈海王の強さを印象づけた。この戦いの後から2人は交流を深めるように。後に克巳は片腕をなくすが、シリーズ5作目となる『バキ道』では烈海王の腕を移植している。