■本棚に並べて余韻に浸る『ハイキュー!!』
最後に、『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された古舘春一氏の作品、『ハイキュー!!』を紹介したい。本作は日向翔陽を主人公に、烏野高校バレー部が全国大会出場を目指す青春スポーツ漫画だ。
背表紙は続き絵となっているわけではなく、各巻でキャラクターが一人ずつスパイクを打つ前の助走を取りながら、上を向いている様子が描かれている。また、監督たちも選手たちに合わせるかのように上を向いており、その姿も印象的だ。
本作の名言に、「バレーは!!! 常に上を向くスポーツだ」というものがある。この痺れる名言を踏まえて、全員が上を向き今にも飛び上がりそうなこの構図を眺めていると、どこか“エモい”気持ちになってくる。
極めつけは最終45巻で主人公の日向が、装いも新たに高く飛び上がっている姿が描かれているところだ。紆余曲折を経て最終的に飛び上がった日向を見て、その成長ぶりについ感動してしまうような見事な仕掛けである。
連載の締め切りに追われながら、単行本用にカラーの表紙まで……と、圧倒的な仕事量。そのうえで背表紙にまで仕掛けを施し読者を楽しませる“漫画家”たちは、つくづく超人的な職業であると感じさせられるものだ。
こうした作者の作品に対する愛を隅々まで感じられるのも、紙版で集めることの楽しさの一つではないだろうか。