鳥山明氏の名作『ドラゴンボール』の単行本は、本棚に並べると背表紙が一枚の絵のように繋がって見える。最終的に何巻まで発売されるか不透明だったこともあってか、天津飯のようなメインキャラクターが描かれていなかったり、ヤジロベーが2人描かれてしまっているなどの人間味溢れるミスも見られたが、漫画を紙版で集めているファンにとってはたまらない、作者の遊び心を感じられる仕掛けであると言えるだろう。
そこで今回は、ファンの心をくすぐる「背表紙にこだわった少年漫画」を3作品紹介したいと思う。
■その安らかな表情に少しホッとしてしまう?『鋼の錬金術師』
まずは、『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)にて連載され、全27巻発売された荒川弘氏の作品、『鋼の錬金術師』を紹介しよう。
錬金術の常識を覆す「賢者の石」を巡って、国家規模で激しい戦いが繰り広げられる本作。背表紙には物語に登場するキャラクターが、各巻一人づつ表情豊かに描かれている。
一見するとよくある背表紙にも見えるのだが、実はカバーを外すことで荒川氏の遊び心に触れることができる。そこにはなんと、各巻で死亡したキャラクターが天に昇っていく様子が、コミカルなタッチで描かれているのだ。
本編で惜しまれながら死亡したキャラクターをはじめ、名もなき兵士から動物まで、時折一言添えながら天に昇っていく様子が描かれている。物語の展開上無数の死亡者が出てしまった巻では、小さな点が天へ続くように描写されている徹底ぶりなのだ。
ちなみに『ハガレン』はカバーを外した背表紙のみならず、表と裏表紙にもコメディ調のイラストが余すことなく掲載されているため、未確認の人はぜひとも荒川氏の遊び心を堪能してみてほしい。
■ボーっと眺めているだけでも楽しい『金色のガッシュ!!』
続いては、『週刊少年サンデー』(小学館)にて連載されていた、雷句誠氏の『金色のガッシュ!!』を紹介しよう。
1000年に一度、魔界の王を決めるために魔物の子どもたちと人間がペアになり、人間界で熾烈な争いを繰り広げるバトル漫画の名作である。
本作は通常版のほかに完全版、文庫版、廉価版と、それぞれ異なる出版社から4パターン発売されているのだが、そのうち完全版と文庫版の背表紙に、それぞれ並べることで続き絵となる仕掛けが施されているのだ。
完全版は各巻に魔物が描かれており、左に駆け抜けるようなイラストで隣り合う巻との僅かな繋がりが伺える構成になっている。
続き絵として、より細かく描かれているのは文庫版だ。魔物のパートナーとなる人間が、さまざまなポーズや表情で背表紙にみっちりと描かれており、それぞれのキャラクター同士の細かなやりとりや、“わちゃわちゃ感”が見ていて楽しく、ついじっくりと眺めてしまう賑やかな背表紙となっているのが魅力だ。
さらにこの文庫版は、カバーを外しても背表紙に同様の仕掛けがあり、1巻から順番にガッシュに魔本を燃やされた魔物たちが描かれているのも必見だ。
全巻読み終えてからこの豪華な背表紙を眺めるとどこか感慨深さも感じられる、作者の『ガッシュ』愛に溢れた背表紙であると言えるだろう。