■完成度の高さを見せつけた記念すべき初代作品!『いただきストリート 私のお店によってって』

 RPG、アクション、シューティングと、ファミコン作品のジャンルも実に多種多様だが、当時から“ボードゲーム”も根強い人気を誇るジャンルの一つだった。

 なかでも1991年にアスキーから発売された『いただきストリート 私のお店によってって』は、のちに数々の続編が生み出されることになる『いたスト』の初代作品として凄まじい人気を獲得した。

 本作は国民的人気RPG『ドラゴンクエスト』シリーズの生みの親である堀井雄二氏が手掛けており、世界的にも有名な“モノポリー”を下地としたボードゲームを楽しむことができる。

 モノポリーといえばサイコロを振ってマスを進みながら、止まった箇所の“物件”を購入し、ライバルたちと駆け引きするのが特徴だが、本作ではルールをより簡単にし、親しみやすいものに調整している。

 分かりやすいデザインもさることながら、サイコロ運に恵まれなかったプレイヤーが一発逆転を狙うことができる“株”の概念や、ほかのプレイヤーとの物件交渉を“5倍買い”なるシステムで簡略化するなど、ゲームのテンポを損なわないための配慮が随所に見受けられる。

 ファミコンゆえにステージ数も限られているなか、それでもしっかりとした戦略が要求される絶妙のコマ配置や、プレイするたびに駆け引きが生まれるよう練り込まれたステージ構成など、創意工夫が光る一作だ。

 のちに数々の続編が生み出される『いたスト』だが、基礎となるルール自体はこのファミコン時代から大きく変わっていないことが、本作の完成度の高さを物語っている。

 “白いパッケージ”には女性キャラと“物件”が描かれており、サブタイトルにもなっている“私のお店によってって”という可愛らしい一文を表現している。圧倒的な完成度に誰もがのめり込んだ、ファミコン時代を代表する名作ソフトと言えるだろう。

 

 当時、あまり多くは採用されなかった“白いパッケージ”だが、あらためて見るとどれも名作揃いであるということが分かる。作品のレベルは高かった一方で、どうしてもパッケージ箱がボロボロになりやすかったのも、今となっては良い思い出なのかもしれない。

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