1991年に『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載が開始された板垣恵介氏による漫画『グラップラー刃牙』。その後、『バキ』『範馬刃牙』『刃牙道』『バキ道』とシリーズが続き、現在も『刃牙らへん』が連載中の大人気作品だ。
それぞれのキャラクターが「最強」を目指して戦う中、意外な形での決着を迎えることも珍しくない同シリーズ。主人公・範馬刃牙は“地上最強の生物”である父親・範馬勇次郎を超えることを目指しながら様々な達人たちと拳を交わすが、刃牙も決して無敗というわけではなく、むしろ意外にも敗北数が多い。
刃牙シリーズでは、いかに実戦で真価を発揮するかも重要だが、もしも実戦だったら主人公が死んでいた可能性もありそうな負け試合もある。今回は、刃牙が運良く生き残ってしまった敗北シーンを振り返っていきたい。
■地上最強トーナメントでのズールとの対戦
まずは、刃牙シリーズでも多くの格闘家が登場して盛り上がった『グラップラー刃牙』の「最大トーナメント編」から。
範馬勇次郎を除いた格闘家たちで激戦が繰り広げられ、地球上で誰が一番強いのかを決めるこの大会で、地下闘技場のチャンピオンであった刃牙が2回戦でぶつかったのが、強靭な肉体を持つバーリトゥードの使い手・ズールだった。ズールは家族を養うために素手で狩猟をしており、本能で戦いを学んでいた。
そのためルールのあるプロ格闘家のような考えはなく、刃牙が観客の声援を受けて颯爽と登場すると、勝負開始の合図を待たずに襲いかかった。そして不意をつかれた刃牙はズールにバックドロップを食らうと、頭突きでボコボコにされ意識を失うことになる。
試合は3本勝負になり、結果的に刃牙がズールに勝利する形となった。だがまさかの奇襲に対応できず、格下相手に不覚をとってしまった刃牙。運良く勝ちを拾えたといって間違いはないだろう。
■「バキさんよ…アンタ敗けたぞい…」
続いては『バキ』「最凶死刑囚編」で描かれた暗殺者・柳龍光との戦いだ。死刑囚たちとは、ルールも何もない、正に殺し合いといった戦いが繰り広げられ、こちらは柳が刃牙の高校に襲撃するところから始まる。
刃牙もその気配は、しっかりと感じ取っていた。柳の使用する暗器の攻撃を避けて、致命傷を食らうこともない。対応は万全に思われたが、柳の持つ「空掌」という隠し技の解放で雰囲気が一変する。
この技は、過去に戦った渋川剛気ですらどのような技なのか知らなかった。そんな不気味な空気が漂う中で柳は刃牙に空掌を食らわせる。空掌の極意は、掌の中を真空状態にすること。それによって口元を塞がれた刃牙は、酸素が脳に回らなくなり意識を失ってしまう……。
周囲が騒ぎ出したことによって柳はその場から退散する形となってしまったが、もしあのまま戦いを続けていたら刃牙は殺されていたはずだ。そんな刃牙の姿を見ていた渋川も「バキさんよ…アンタ敗けたぞい…」と呟いていた。
実戦では試合とは違い相手の情報が無いことがほとんどだ。そんな中で、対応できなかった刃牙は、明らかに柳よりも実力が劣っているということになる。