ラスボス直前の最後の警告…ファミコン&スーファミRPGで緊張感がマックスになった…「ここから先は戻れないぞ」演出の妙の画像
『ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン』商品画像より
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 レベル1から冒険を始め、いよいよ迎えるロールプレイングゲームにおける最後の戦い。装備を見直し、回復アイテムに忘れ物はないか確認し、いざ立ち向かうラスボス戦だが、「取り返しがつかない要素」というものはセーブポイントやリセットがあったとしても、心臓がバクバクしてしまうもの。

 特にファミコンスーパーファミコン時代のRPGでは、ラストダンジョンへ入ったら引き返せないパターンも珍しくなく、ダンジョンに入る直前に問われる、警告の意味も混じった「ここから先は帰れないがいいか?」といった感じのセリフにドキドキさせられた。勇気を出して、「はい」か「いいえ」を選択するが、最後の戦いが目の前に来たことをプレイヤーに伝える、緊張感が高まる演出でもあった。

■『ロマサガ2』の本当に「引き返せない」ドキドキ

 そういった、帰れない要素がとりわけ多いのが、『サガ』シリーズ。中でも有名なのが「…逃さん…お前だけは…」のセリフで多くのプレイヤーにトラウマを与えた『ロマンシングサ・ガ2』のラスボス前のシーンだ。

『ロマサガ2』の最大の目的は、七英雄をすべて倒すこと。ラストダンジョンの最奥には最後の七英雄とのバトルが待ち構えているが、階段に足を一歩踏み入れると「この先は引き返せないぞ。」という警告が出る。「ちょっと待て」と「行くぞ!」と二つの選択肢から「行くぞ!」と答え、そのバトルに勝利することで、真のラスボスである合体七英雄と戦うことになる。

 合体七英雄は、RPGのラスボスとしてはかなりの強さで、味方を相当に鍛えているか、クイックタイムが無いと勝てないほど。そのため、初見プレイヤーのほとんどは惨敗し、帰ってパーティ強化をするため引き返そうとする。しかし、その瞬間、「…逃さん…お前だけは…」というメッセージが出て、帰れなくなってしまう。つまり、階段下で聞かれた「この先は引き返せないぞ」という警告は言葉通りのものだったのだ。

 七英雄の執念をダイレクトに感じさせる演出だが、『ロマサガ2』はどこでもセーブが可能なシステム。そのため「念のため」と、合体七英雄との戦いを前にセーブをしてしまった慎重派のプレイヤーは、勝つこともできず、階段前からやり直すこともできず、ひたすら「逃さん…」と連れ戻される“詰んだ”状態になってしまうのだ。類を見ない理不尽な要素ではあるが、最後までこの恐ろしさを残しているのが『ロマサガ』の醍醐味でもある。

■過去へ飛ぶための決意「あともどりはできないぞ」

 地底大陸の奥深くにある最低国。その最低国の過去の洞窟に、『MOTHER2 ギーグの逆襲』のラスボスであるギーグが潜んでいる。主人公のネスたちは、過去の世界から攻撃をしてくるギーグを倒すために、タイムスリップしなければならない。

 過去の最低国に向かうため、博士にスペーストンネルを完成させてもらったネスたちは、いよいよ過去の最低国に向かうことになる。しかし、そんなネスたちに、博士は警告する。「君たちの頭脳プログラムをロボットに移植して、過去へ行くしかない」と。

 つまり、過去に行くためには生身の人間のままでは不可能で、ロボットに頭脳プログラムを移植するしかないのだ。そしてその場合、本来の肉体は抜け殻となって、元に戻る保証は無くなる。

 博士はそれでも過去に行くかどうか再三確認し「もう あともどりは できないぞ」「せめてじぶんでスイッチをおしてくれ」とネスたちに警告する。プレイヤーはここで「はい」を選択し、自ら過去に向かうのだ。

 この時点で緊張感と期待感が最高潮に高まり、いよいよクライマックスだという気分になるが、過去の最低国に着いたときにさらなる衝撃が待ち受けている。

 過去の最低国には無機質な崖が広がっており、ネスたちは全員、銀色で角ばった金属のロボットになっている。そしてセーブポイントはあるものの、博士の言うようにもう元の世界には戻ることはできない。

 ビジュアルからして「もう引き返せない」といった現実を突きつけられているよう。ダンジョンのグラフィックも、敵のグラフィックも、そして味方のグラフィックすら無機質で、少年の冒険譚のラストであるにもかかわらす、人生がここで終わるような悲壮感を感じさせるのだ。これも効果的な演出である。

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