■愛する人のために戦った末路は……『仮面ライダー555』草加雅人
最後に紹介するのは、『仮面ライダー555』で仮面ライダーカイザに変身する草加雅人だ。
彼はヒロインの園田真理が子供時代を過ごした、小学校を兼ねた養護施設「流星塾」の同窓生である。カイザとして戦うようになってからは、主人公・乾巧らが居候する「西洋洗濯舗 菊池」で共同生活を送るようになった。
普段は大学生をしており、3つの部活動を兼部しそのすべてで部長を務めている草加。正義感も強く、一見すると初代仮面ライダーの変身者・本郷猛を彷彿とさせるような文武両道の完璧超人に見える。
しかしその本性は攻撃的で、自分が敵とみなした人物は徹底的に排除しようとする。またオルフェノクのこと、そして自分が好意を寄せる真理のことになると見境がなくなる。
草加は主人公・巧に対して特に良い感情を抱いていない。共同生活を送る真理や菊池啓太郎に嘘を吹き込んで巧を孤立させようとしたり、友情を育みつつあった巧とホースオルフェノク・木場勇治の仲を引き裂こうとしたりと、ヒーローの素質を疑うような嫌がらせも仕掛ける。
しかしその一方で草加なりの正義感を持ち合わせていることもうかがえる。真理や流星塾のメンバーは全力で守ろうとするところ、家族同然の流星塾メンバーに危害を加えたオルフェノクを憎む気持ちが一貫しているところ、そしてオルフェノクを倒すための共闘では巧相手にも一旦私情を捨て協調性を発揮するところなど、曲がりなりにもヒーローだと言えるだろう。
何度もウェットティッシュで手を拭くクセがある草加だが、これはかつてヒロインの真理をオルフェノクから守れなかったというトラウマのせいだ。彼のオルフェノクへの強い憎悪はこうした恐怖心の裏返しでもあるのかもしれない。
結果として彼は今まで重ねてきた悪行から因果応報とも言えるような結末を迎えるが、完全な悪人とは言い切れないことや、過去が辛いものであることから悲しみを感じた視聴者も多いのではないだろうか。
『555』には他にも、怪人になっても心だけは人間であろうと苦悩するホースオルフェノク・木場や、他人の悪意によって夢を閉ざされたスネークオルフェノク・海堂直也など、「悲しき悪役」と言えるようなキャラクターが比較的多数登場する。
ヒーローものにおいて悪役は倒されるべきキャラクターだが、それぞれの悲しい背景が描かれていると、何とかして救われてほしいとすら考えてしまう視聴者も多いのではないだろうか。
9月3日から放送開始された『仮面ライダーガッチャード』でどんな悪役が登場するのかも楽しみだ。