初代の時点で、改造人間という悲しい設定がある『仮面ライダー』の悪役。平成に入ってからの作品では彼らの背景がよりドラマティックに描かれており、悪役ながらあまりの悲しさに感情移入して見てしまうことも少なくない。
今回はそんな悲しき悪役キャラを3人紹介していこう。
■死してなお生き続けようとした『仮面ライダーW』大道克己
最初に紹介するのは『仮面ライダーW FOREVER AtoZ/運命のガイアメモリ』、そしてVシネマとして制作されたスピンオフ『仮面ライダーW RETURUNS 仮面ライダーエターナル』に登場する仮面ライダーエターナルの変身者・大道克己だ。
克己は16歳のときに交通事故で死亡したが、なんとかして息子を生き返らせようとした科学者の母親によって生き返る。その技術は財団Xに買われるが、後にライバルのミュージアムに負けて資金援助を停止されてしまう。
そこで彼は財団Xを見返すべく、戦闘能力が高くかつ自分と同じように死後蘇生した者たちを集めた傭兵部隊「NEVER」を結成。自分たちの力を証明しようと数々の戦いに身を投じるようになっていく。
克己は戦いの最中、ミーナという女性に出会い、彼女をはじめとした人体実験施設に閉じ込められている超能力兵士「クオークス」を助け出そうとする。しかし彼らは、敷地外から出ると苦しみながら絶命してしまうよう改造されていたのだ。
ミーナだけは生きていたがその事実に気付かなかった上、他のクオークス達を救おうとした自分の行動が全て仇になってしまった絶望から、克己は変わってしまう。そして最終的には、「風都史上最悪の犯罪者」とまで言われるほど悪行に出ることになる。
あまりにも罪を重ねすぎたキャラクターだが、一度死んでいるからこそ“過去が消えていくならせめて明日が欲しい”と自分の生きた証を懸命に求め続けた姿は、まさに悲しき悪役と言えるだろう。
■仮面ライダーの敵はまた別の正義?『仮面ライダー龍騎』神崎士郎
次に紹介するのは『仮面ライダー龍騎』の神崎士郎だ。ライダーバトルを仕組んだ作中の黒幕とも言える人物で、本作のヒロイン・神崎優衣の兄である。
ライダーバトルに参加させる際には、“勝てばどんな願いも叶う”と言葉巧みに引き込み、戦わない者には催促しに行くという水面下での立ち回りをしている。
彼の目的は仮面ライダー同士を戦わせてより新しい命を探し出し、その命を与えることで優衣を現実世界に生き返らせるためであった。
優衣と士郎は仲の良い兄妹だったが、回想では両親からネグレクトを受けているような描写がある。そうしたこともあり衰弱しきっていたのか、ある日優衣は亡くなってしまった。しかしそのとき鏡に“もう一人の優衣”が現れ、「自分が現実世界に行くことができるが、20歳の誕生日に消滅してしまう」という。士郎がそれを承諾すると鏡の世界の優衣は現実世界の死んでしまった優衣とひとつになり、生き返った。
士郎は優衣を失いたくない一心から大学、大学院にて、鏡の中に存在する世界“ミラーワールド”の研究に打ち込んだ。そうして新しい命を得られるというライダーバトルのシステムを構築するが、自分の正体や兄・士郎がライダー同士を戦わせる理由を知ると、優衣は自分に命が与えられることを強く拒絶する。
最愛の妹を亡くした士郎の悲痛な思いと、誰かを犠牲にしてまで生きることを拒む優衣。優衣が新しい命を拒むたびに時を戻し、ライダーバトルを繰り返す士郎の姿は、単なる悪役と断ずることはできず胸が苦しくなる。