■主人公への恋心が引き寄せた新たな恋

 両親のパートナー交換という衝撃的な出来事をきっかけに、その子供同士が恋に落ちていく様子を描いた吉住渉氏の漫画『ママレード・ボーイ』では、須王銀太&鈴木亜梨実カップルが印象的だった。

 銀太は中学時代に主人公・小石川光希と両想いになるも付き合うまでは至らず、高校でも密かに片思いを続けていた。一方の亜梨実は松浦遊の中学時代の元カノで、高校生になって遊と再会した際に再び彼に恋をする。

 2人には「一途で主人公たちに好意がある」という共通点があった。ゆえに最初はチームメイトのような関係で、結託して光希たちの関係を壊そうとしたことも。しかし、光希と遊の絆は深まる一方で亜梨実たちは失恋してしまう。

 傷を慰めあううちに銀太と亜梨実はお互いの良さに気づき始め、じわじわと距離が近づいていった。亜梨実から「須王くんが好きよ 大好き」と告白するシーンでは、積極的で一途な彼女の性格が表れていたと思う。ちなみに、『ママレード・ボーイ little』では子どもも授かっている。

■日野誠と森下真理子の素朴で暖かい恋

 最後は、柊あおい氏の漫画『星の瞳のシルエット』から、日野誠&森下真理子を振り返ってみたい。森下真理子は、主人公・沢渡香澄の親友で、「すすき野原の男の子」こと久住智史に恋するライバルでもあった。

 当初香澄は真理子を応援していたが、次第に真理子と智史の三角関係に発展していく。一方の真理子は、香澄の失恋報告を受けて智史に告白。念願叶って付き合う事に成功する。

 しかし、香澄への好意が残っている智史の気持ちを尊重し自ら別れを告げた。真理子は恋を叶えるためにやりすぎてしまう事もあったが、はっきりしない香澄達に振り回された一面もあるように思う。

 日野は、偶然見かけた真理子に一目惚れをした香澄や智史と同じ高校の同級生だ。温厚で大らかな彼は、自分の気持ちを抑えて真理子を応援したりと自我の強い彼女とは正反対なタイプだ。

 真理子はそんな日野の優しさに甘えてデートをすっぽかし、傷つけてしまう。遊園地で1人ぽつんと真理子を待ち続ける日野の姿は、見ていて切なくなったものだ。それでも真理子と向き合い、最終的に交際まで発展させた日野の一途さには感服する。

 主人公の恋愛は、恋のライバルとなる「脇役」がいてこそ引き立つ。しかし、「脇役」たちは作中で主人公たちに振り回されたりこっぴどく振られたりと、中々に不憫な役回りが多い。だからこそ、最後に幸せを勝ち取ったときはこちらの心も暖かくなるものだ。

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