■母親の歪んだ愛に翻弄された巽征丸
「飛騨からくり屋敷殺人事件」に登場する巽征丸もまた、非常に不憫な被害者の一人だ。彼は、飛騨の旧家である巽家の後妻・巽紫乃の息子で、母親思いの好青年だった。彼もまた、殺されるような落ち度は何一つない。むしろ、紫乃が後妻であることから、前妻の子どもである三兄妹たちとの折り合いは非常に悪く、日々相当なストレスを受けながら生活していたであろう。
そんな生活の中、なぜか前当主・蔵之介は遺言で前妻の子どもではなく、征丸を財産の相続人に選んだ。このことを機に、前妻の三兄妹たちとの立場は逆転し、征丸と紫乃は幸せを掴み取るはずだった。征丸はきっとそんな未来を確信しただろう。
しかし、彼は真実を何も知らないまま、お互いに支えあいながら生きてきたと思っていた紫乃に殺されてしまう。その後には首を切られるという、母親からのありえない仕打ちを受ける。
犯人の殺害動機は、「征丸ではない、本当の息子に家督を継がせるため」だった。ひどく歪んだ母親の愛に翻弄され、人生を終えた征丸に同情するしかない。
今回は『金田一少年の事件簿』の中から、犯人に殺害された理由が理不尽すぎた、かわいそうな被害者たちを紹介した。他にも、準レギュラーだった佐木竜太や桜樹るい子、緒方夏代なども犯人の勝手な都合で殺されている。個人的には、犯人に恨まれている可能性を理解しながらも、犯人との夢のために生活していた文月花蓮に最も同情してしまう。
この記事では、なるべく事件の核心には触れないよう注意して紹介しているため、殺害動機や事件の真相など、記憶が曖昧なままの読者もいるだろう。是非、漫画やアニメを見返して『金田一少年の事件簿』に浸ってみてはいかがだろうか。