漫画に登場するキャラクターは人間離れした身体能力で読者を驚かせてくれるが、卓越した肉体や技術は“水上”すら悠然と歩行してみせる場合がある。ときにシリアスに、ときにコミカルに、作品内で“水上”を走った驚くべきキャラクターたちについて見ていこう。
■15mまでならいっさい問題なし!? 『バキ』烈海王
1991年から『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載されている板垣恵介氏の『グラップラー刃牙』シリーズは、強靭な肉体を持つキャラクターたちが多種多様なパフォーマンスで読者の度肝を抜いてくれる。
今なお連載が続く本作にて、“水上”を走ってみせたのが中国拳法家・烈海王だ。烈は中国四千年の歴史のなかでも最高峰の才を持つ拳法家とされており、“拳雄”、“魔拳”といった数々の異名を持つ。
「最大トーナメント」で主人公・範馬刃牙と激闘を繰り広げ、それ以降たびたび登場しては数多の猛者たちと熾烈な戦いを繰り広げた烈。拳法の技はもちろんのこと、武器術や精進料理にまで長けた彼だが、第2部である『バキ』の作中で、まさかの活躍を見せる。
烈は最凶死刑囚の一人であるヘクター・ドイルと激闘を繰り広げるが、すんでのところで横槍が入り、昏倒させられてしまう。一度は烈を残して逃走しようとするドイルだったが、身動きが取れない烈を夜中ずっと見守り、出血多量で気絶してもなお警護し続けてみせた。
このまさかの行動に胸を打たれた烈はドイルを背負って病院を目指すのだが、そのさなかで大きな川に行く手を阻まれてしまう。
迂回する時間を惜しんだ烈は、なんとそのまま川目掛けて突進。“片足が沈む前にもう片足を出す”というとんでもない理論で、水の上を走り切ってみせたのだ。烈曰く「15mまでなら問題ない」とのことだが、その常識破りな突破方法に驚いてしまう。
しかし、それでいてどこか“烈ならあるいは”と思えてしまうから不思議である。中国拳法のみならず、思わぬ超人っぷりを見せつけた驚きのキャラクターだ。
■ぶっ飛んだ修行法だけでなく豆知識にも注目…『魁!!男塾』藤堂兵衛
常識ではありえない“トンデモ技”が飛び出すのも、漫画作品の醍醐味といえるだろう。1985年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された宮下あきら氏の『魁!!男塾』は、とくに人間離れした妙技が飛び出すことでも有名だ。
作中、凄まじい歩行術を見せつけたキャラクターといえば、藤堂兵衛である。作中最強キャラの一角である男塾の塾長・江田島平八の宿敵として登場した極悪人で、“昭和の怪物”と称される大富豪だ。
藤堂は悪行の数々に手を染めた結果、日本有数の財力と権力を手に入れ、政界にも多数のコネを持っている。性格はまさに“極悪”で、他人の命はもちろんのこと、自身の息子たちにすら平気で殺し合いをさせる非道ぶりを見せつけていた。
かなり高齢な藤堂だが、一方で自身も相当な実力者として数々の技を身につけている。とくに驚異的だったのが、“黒兜流”の奥義とされる特殊な走行法・“瞬噭刹駆(しゅんきょうせっく)”だ。
作中、“瞬間移動”のようなスピードで高速移動し、なんと自身が投擲した武器を回り込んでキャッチ。連続で相手に投げつけるという離れ業を見せていた。
なんといっても凄まじいのはこの技の会得方法で、なんと硫酸を満たした池の上に不溶性の紙を浮かべ、そこを駆け抜ける……というものなのだ。
ただの水の上ならばまだしも、硫酸ともなれば失敗した際の大怪我は必至である。ちなみにこの技を会得しようとした修行者たちが走りながら“そば”を食べたことが、現在の“かけそば”の語源になっている……と、かの有名な「民明書房」には書かれていた。
凄まじいスピードはもちろん、そのあまりにも常識破りな修練方法にも驚かされてしまう。