2022年6月24日発売の『ヤングアニマル』13号より、作者・三浦建太郎さんが亡くなったことで物語が未完となっていた漫画『ベルセルク』の連載が再開となった。三浦さんは生前、高校時代からの親友である漫画家・森恒二さんに同作のストーリーやエピソードを伝えており、三浦さんから引き継ぐ形で森さんが同作のアシスタントチームとともに連載を継続。2023年9月29日に待望のコミックス42巻が発売され、最新巻の表紙には原作・三浦建太郎、漫画・スタジオ我画、監修・森恒二と3者の名前がクレジットされている。
漫画の中には、作者の突然の訃報によって惜しまれつつも未完となってしまった名作は少なくない。だがファンが悲しむ中、『ベルセルク』のように関係者やスタッフの手によって物語が引き継がれていくケースもあり、思わぬ形で「未完の名作のその後」がファンに届けられることもある。
■書き下ろし脚本をもとに生まれた『ちびまる子ちゃん』18巻に、アニメで続きが描かれた『イタKiss』
たとえば、2018年にこの世を去ったさくらももこさんの『ちびまる子ちゃん』もそうだろう。
同作は2018年12月に発売されたコミックス17巻で一度完結を迎えているが、2019年にはさくらプロダクションで長年アシスタントを勤めていた小萩ぼたんさん作画による続編が『りぼん』で不定期に掲載され、2022年10月に4年ぶりとなる最新刊18巻が発売された。
これは、生前さくらさん本人がアニメ用に書いていた脚本をもとに描かれている続編。イラストのタッチも世界観もそのままに再現されており、さくらさんが遺した作品を漫画にしてファンに届けたいという小萩さんやさくらプロダクションの想いが伝わってくる続編だ。
同じく少女漫画では、多田かおるさんによる漫画『イタズラなKiss』もそうだろう。
『別冊マーガレット』で1990年に連載が始まった『イタズラなKiss』は、国内のみならずアジア諸国でドラマ化もされ、「イタKiss」の愛称で今なお多くのファンから支持されている大ヒット作だ。
しかし作者の多田さんが1993年3月に急逝。当時『イタズラなKiss』はまだ連載中であったが物語はそこで中止となり、コミックスも23巻で未完となっている。38歳という早すぎる死に、ファンたちは大きなショックを受けた。
琴子の妊娠疑惑という山場で物語が止まってしまったため、悲しみとともに続きが気になっていた読者も多かっただろう。しかし、2008年に放送されたテレビアニメでは、琴子たちの物語の続きが描かれている。生前に多田さんがまとめていたシナリオの構想が見つかったことで編集者たちがアニメ版の続編を制作し、琴子の恋愛がハッピーエンドを迎えるまでの物語を描きあげた。
■ちばあきおさんタッチで描かれる『プレイボール』
1973年に『週刊少年ジャンプ』で連載が始まったちばあきおさんによる野球漫画『プレイボール』も、未完で終わった漫画の一つである。同作は当初あきおさんの代表作『キャプテン』のスピンオフとして描かれたが、人気を博し長期連載となった。
物語の山場を迎えた矢先の1978年、あきおさんが体調を崩して連載休止となる。1984年には新作『チャンプ』を描き始めたが、悲しいことに同年命を落としてしまう。
その後、『砂漠の野球部』や『グラゼニ』(原作者・森高夕次名義)など野球漫画を手がける漫画家・コージィ城倉さんが2017年からは続編となる『プレイボール2』、2019年からは『キャプテン2』を執筆。「2の制作」という企画は、あきおさんの息子さんによるもの。その企画を、親族と編集部が原作ファンであったコージィさんに制作の話を持ちかけたことで実現した。
『プレイボール2』は絵のタッチやなどが、あきおさんそっくりに描かれているがこれについてコージィさんは、ちばてつやさんとの対談時に「膨大な数の試行錯誤を重ねてだんだんとマネができるようになった」と述べている。あきおさんへの多大なリスペクトが感じられる言葉だ。