■スタッフが引き継いだ『クレヨンしんちゃん』の日常

 1990年の連載開始以来、30年以上に渡り若者から大人まで多くの人々から愛され続けている臼井儀人さん原作の『クレヨンしんちゃん』。関連書籍までを含めると、累計発行部数が驚異の1億部オーバーという国民的人気作品である。

 登山が趣味の臼井さんは、2009年9月に1人で荒船山に登り、不慮の事故によって帰らぬ人となってしまった。当時は臼井さんを心配した身内が捜索願を出したことでニュースでも大きく取り上げられ、視聴者に衝撃を与えた。

 臼井さんが書き残していた遺稿が見つかったことで、『まんがタウン』での連載は2010年3月まで続く。その後臼井さんが作り出す『クレヨンしんちゃん』は絶筆となったが、同年8月からは作風や世界観をそのまま引き継いだ『新クレヨンしんちゃん』が、臼井さんの漫画制作に関わっていたアシスタントたちの手によって続けられ、現在も「臼井儀人&UYスタジオ」の名義で、野原一家の日常が読者に届けられている。

■藤子・F・不二雄さんの遺作『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』

 最後に紹介するのは、藤子・F・不二雄さんの遺作である長編漫画『ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』。

 同作を手掛ける前から藤子さんは肝臓がんや胃がんを患っており、短編を辞めて長編作品のみを制作していた。体調不良と戦いながらペン入れを行っていた藤子さんだが、『月刊コロコロコミック』での連載第3回目の原稿を描いている途中で容体が急変し、そのまま帰らぬ人となってしまった。

 しかし、藤子さんはあらかじめ物語の結末を藤子プロのスタッフたちに伝えていたため、遺された構想メモや生前の藤子さんの発言からアイデアを拾い合わせて制作が続けられた。藤子さんが物語の詳しい構想を事前に知らせるのは 『のび太のねじ巻き都市冒険記』が始めてのことで、当初スタッフたちは驚きと戸惑いを感じたと話している。

 漫画やアニメなど何らかの形で続きが描かれた作品は、作者に対するリスペクトや作品への大きな愛を感じられるものばかりだ。

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