■「オッス、オラ悟空！」は野沢さんのアドリブ
４０代の筆者にとって野沢さんといえば、なんと言っても『ドラゴンボール』の孫悟空であり、「オッス、オラ悟空！」のセリフがあまりにも有名だ。
しかしこのセリフ、驚くことに原作マンガには一度も登場しない野沢さんのアドリブだったという。以前『ダウンタウンなう』に出演した際にもこのことを語っており、アフレコ現場で思いついた野沢さんの一言が現場スタッフに採用され、その後、悟空を代表するセリフになったそうだ。
逆に考えれば、そんなアドリブが出てしまうくらい、「孫悟空」というキャラを理解していたとも言えるエピソードだろう。
また、野沢さんは演じる前に原作をあえて読まないことでも知られている。声に感情をのせるために、その後の展開を知りたくないのだという。
すなわち『ドラゴンボール』の世界で悟空が体験していることは、そのとき声をあてている野沢さんも同じタイミングで体験している。悟空の声から伝わってくる感情は野沢さんの感情そのものなのだ。作中の言葉を借りれば、孫悟空と野沢雅子さんはまさに“フュージョン”していた。
今回は、レジェンド声優・野沢雅子さんのさすがすぎるエピソードを紹介してきた。日本のアニメの歴史とともにキャリアを重ねてきた野沢さん。女性だが、鬼太郎や悟空など少年の声を担当することも多かった。
切り開いてきたこの道は、のちの『ＯＮＥ ＰＩＥＣＥ』ルフィ役の田中真弓さん、『新世紀エヴァンゲリオン』碇シンジ役の緒方恵美さん、『名探偵コナン』江戸川コナン役の高山みなみさんなどの活躍にもつながり、女性が少年役をやることは今や日本アニメのスタンダードになっている。
まだまだ現役の野沢さんだがその功績は大きく、彼女の声優魂は確実に受け継がれているのだ。
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