■ヤンキーブームの中で描かれた不良少年との恋愛
80年代といえばヤンキーの全盛期で少年漫画誌や少女漫画誌でも数々のヤンキー漫画が生まれた時代。
ラブコメであるあるだったのが、生粋のヤンキーや、ヤンキーとまではいかなくともどこかちょい悪な雰囲気を醸し出す男性キャラとの恋である。平凡な女の子が、不良少年に憧れを抱くといったパターンもあった。しかし彼らの多くはモテるので、ヒロインには恋のライバルが付き物である。
80年代のラブコメに登場したヤンキーキャラは、ケンカに明け暮れながらも恋愛に対しては奥手に描かれる傾向があった。ゆえに物語としても、最初は冷たい彼が次第に緩和して甘くなっていくというパターンや、ピュアで胸が締め付けられるような純愛が描かれている事が多かったように思う。
少女漫画で言えば、1986年から『別冊マーガレット』で連載された紡木たく氏による『ホットロード』なども人気を博した。繊細なタッチで描かれる主人公たちの切ない恋の行方を描いた同作は、ヒットした不良少年×恋愛漫画の一つ。
怖そうな外見の内に秘めたピュアな恋愛観という構図や、ぶっきらぼうな不良少年がふと見せる優しさというのは、80年代のラブコメあるあるなのかもしれない。この時代のヤンキー少年の魅力は90年代の漫画にも引き継がれ、1991年から『りぼん』で連載が始まった矢沢あい氏による『天使なんかじゃない』では主人公・冴島翠とリーゼント頭の元ヤンキーの少年・須藤晃との恋模様が描かれ、同誌を代表する人気作となった。
80年代のラブコメは、恋愛ならではの切なさや楽しさをこれでもかと詰め込んだ作品ばかりである。いいところで毎回邪魔が入ったり周囲のドタバタに巻き込まれたりと、一進一退を繰り返しながら進む恋愛模様は当時の読者達を強く惹き付けた。
振り返って見れば「そんなことある?」と突っ込みたくなるシーンもあるが、古き良きラブコメには令和の今読み返しても色褪せないドキドキ感がある。