『100万$キッド』や『ジャストミート』も…『週刊少年ジャンプ』黄金期に奮闘していたライバル誌の“隠れた名作たち“を振り返るの画像
講談社コミックプラス『100万$キッド』第3巻(講談社)

週刊少年ジャンプ』(集英社)黄金期といえば、1980年代後半から1990年代を指すことが多い。当時の読者によって多少の違いはあるものの、『ドラゴンボール』や『SLAM DUNK』に代表される名作が大人気となり、歴代最高部数はなんと653万部とまさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

 さて、そんなジャンプ黄金期だが、実はライバル誌にも名作が揃っていた。『週刊少年マガジン』(講談社)の『はじめの一歩』や『週刊少年サンデー』(小学館)の『うしおととら』など、ジャンプに勝るとも劣らない作品が活躍していたものだ。

 そこで、筆者の独断になるのだが、ジャンプ黄金期に奮闘していたライバル誌の隠れた名作を連載5年以内の作品に絞って振り返ってみよう。

■早い決着がよかった! 少年ギャンブラーが100万$(約1億円)を元手に活躍する『100万$キッド』

 1986年41号から1988年19号にかけて、『週刊少年マガジン』で連載されたのが石垣ゆうきさん(原案協力:宮崎まさるさん)による『100万$キッド』だ。

 財閥の御曹司である主人公・二階堂ひろしは、父親からもらった1億円をギャンブルに使って増やそうとラスベガスへ向かう。

 次期当主を決めるためとはいえ、息子3人にそれぞれ1億円を渡してしまう父親も問題だが、それをギャンブルに使う息子も困ったもの。ちなみにこのとき、ひろしは14歳。中学生がギャンブルに興じるというのも、今のご時世ではご法度かもしれない。まあ、漫画の世界において、金持ちというのはどうにも一般常識がないように見えるな……。

 さて、この漫画は展開が速かった。おもにポーカーがメインで進んでいく話なのだが、ひろしと対決する敵キャラもイカサマばかりするヤツら。そんな面々と勝負をしていくなか、ほとんど1話で完結する場合が多く、ダラダラと話が続かないのがいいところだった。

 ちなみに筆者は小学生のころに愛読していたのだが、時代はまだまだ昭和で空き地で野球やサッカーで遊び、家ではファミコンに興じていたもの。ファミコンで飽きたときは友人とトランプを用意しては、ポーカーで遊んでいたものだ。

 そういえば、石垣さんにはこの後『MMR マガジンミステリー調査班』でも楽しませてもらったな。あの作品も、ジャンプ黄金期に登場した隠れた名作といえるだろう。

■すべてを失った気弱な少年が勇猛果敢に成長して悪を討つ『覇王伝説 驍』

『週刊少年マガジン』で1991年43号から1995年34号にかけて連載されたのが、島崎譲さんの『覇王伝説 驍』だ。架空の設定ながら、時代は戦国時代を彷彿とさせる。

 主人公・鳳驍は大領主の息子で跡継ぎ候補。心優しい少年で争いごとも大嫌いなのだが、叔父である八朶冥鬼の裏切りに遭い、父が囚われてしまう。磔にされた父を救えず、涙ながらに自ら弓矢で父の命を断つことになった驍。その後は復讐を誓い、天下を獲ることを目指しはじめる。

 しかし、徹底的に驍を追い詰めていく冥鬼は、驍の最大の理解者でもある姉を拉致。領地を奪った挙句、さらに逃げ道にまで先回りする。なにもかも失ってしまう驍なのだが、ここで唯一味方となったのが巽凱だ。

 凱は鳳軍のなかでも最強であり、「千人力の武神」として君臨しているだけにやたらカッコいい。敵の大軍を後方から一人で切り崩していくのはさすがで、伝令も「たった一人です!」なんて、やたら自らの強さを強調しているのがちょっと面白かった。凱によって助けられた驍は父の仇と姉を救うため、逃げながら力を蓄えようとするのだ。

 その後は驍の持ち前の人の良さで多くの仲間ができていくのだが、この作品は容赦なく味方が死んでいくのも特徴だった。とくに第一部での甲斐流輝と仁紗辰人の最期は胸に来るものがあった。とはいえ、甲斐はあとで復活するのだが……あの時の涙を返して欲しいぜ。

 最初は泣き虫で刀すら振れない少年だったのに、仲間の死を乗り越えながら急成長していく驍も徐々にカッコ良く見えてきたものだった。冥鬼との決戦では、凱も驚くほどの若武者ぶりを見せていた。

 登場人物のほとんどが驍を臆病で甘いヤツと見下すのだが、凱だけは最初から一貫して驍を守り、将来性を信じて忠誠を尽くすところがよかったな。

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