漫画の中には現実の土地を舞台とした作品が多々あり、推し作品・推しキャラの聖地巡礼を楽しむファンも多い。今回は、現在盛り上がりを見せている『呪術廻戦』渋谷事変にちなみ、数々の聖地の中でも「渋谷」にスポットライトを当てて行こうと思う。
■喧嘩とボクシングと友情を描いたヤンキー漫画『ろくでなしBLUES』
森田まさのり氏による『ろくでなしBLUES』は、1988年から『週刊少年ジャンプ』で連載されたヤンキー漫画を代表する作品のひとつ。喧嘩と友情、ボクシング、ギャグ要素が上手く嚙み合い、爆発的な人気を博した。
同作は、前田太尊・鬼塚・薬師寺・葛西からなる東京四天王が通う高校のある「吉祥寺・渋谷・浅草・池袋」を拠点に物語が展開された。渋谷をシマとしていたのは、渋谷楽翠学園の頭を張っていた鬼塚で、「渋谷編」では渋谷と吉祥寺を舞台に鬼塚率いる渋谷楽翠学園勢と前田率いる吉祥寺の帝拳高校勢との全面対決が行われた。
ことの発端は、前田の親友・山下勝嗣と今井和美が渋谷でデートをしていたこと。彼は和美をナンパした渋谷楽翠学園の生徒とケンカになってしまう。厳密に言えば、最初に手を出したのはナンパ相手の足を蹴った和美である。しかし、そこに後をつけてきた前田も加わったことで騒ぎが広がり、渋谷勢と吉祥寺勢は抗争へと発展する。
渋谷でも両高の生徒が顔を合わせればケンカになっていて、至るところヤンキーだらけの状態。そんな中でも、渋谷駅や今は無き「109-2」など、1990年代の渋谷の華やかさや都会感がしっかりと描かれていた。
この頃の鬼塚は独裁的で力で仲間を押さえつけ周囲からも反感を買っていたが、前田とのタイマンに負け、上山に後を委ねる。最強だった鬼塚が、「一人で生きてんじゃねーんだよ」という前田の言葉で心を入れ替えるラストのシーンも印象的であった。
■実写ドラマも大ヒット!『今際の国のアリス』
2010年から『週刊少年サンデーS』および『週刊少年サンデー』で連載された麻生羽呂氏の『今際の国のアリス』も、渋谷が舞台になっている漫画の一つだ。
山﨑賢人主演によるNetflix配信のドラマでも渋谷が舞台となっているが、撮影は渋谷ではなく栃木県足利市に渋谷スクランブル交差点を再現した大規模セットを組んで行われたとのこと。街並みのあまりのリアルさに「本当にこれがセット?」と驚いたものである。
同作は、渋谷に上がった大きな花火を見た人々が「今際の国」で目覚めるところから始まる。生存権をかけた命がけの「げぇむ」に挑みながら、「今際の国」の秘密に迫っていくミステリー作品だ。花火の意味を含め、最後まで目が離せないドキドキの展開は必見である。
漫画の中では渋谷スクランブル交差点をはじめ道玄坂など渋谷の街のさまざまな場所が描かれており、至る所で「げぇむ」が行われていた。だが、『今際の国のアリス』に出てくるのは、通常の渋谷ではなく建物が朽ち果て木や蔦がる荒廃した渋谷。いつもは人でごった返している渋谷がもぬけの殻になっている様子から、漫画ならではの新鮮さを感じるだろう。