■渋谷の街に人食い巨大金魚が出現!『渋谷金魚』
蒼伊宏海氏による漫画『渋谷金魚』は、タイトルに「渋谷」がついていることからも分かるように、舞台のほぼすべてが渋谷だ。もともとはスクウェア・エニックスの『ガンガンJOKER』2016年2月号に掲載された読み切り漫画だったが、人気が集まり同年に連載作品へと切り替わっている。
斬新な設定で読者に驚きを与えた同作は、平凡な渋谷の街に突然「人食い金魚」が現れ人々を無差別に襲うというパニックホラー漫画だ。片言の単語を話し、空中を当たり前のように泳ぎながら次々と人を食べる金魚の群れは、「なぜ金魚?」という疑問とともに見るものに絶望感とこの上ない恐怖心を与えた。
作中では渋谷の街全体が巨大水槽のように隔離されその中で物語が進むため、描かれる場所も渋谷の街のみ。センター街や道玄坂の街並みはもちろん、「109」をモチーフにした「009」など渋谷おなじみの建物も登場している。
■バケモノと人間の絆を描く『バケモノの子』
最後は、細田守監督による2015年のアニメ映画『バケモノの子』。同作では、人間界の「渋谷」とバケモノの世界の「渋天街」が交差しながら物語が展開していく。
孤独感を覚えていた人間の少年・九太は、ひょんなことから荒くれ物のバケモノ・熊徹と出会う。バケモノの住む渋天街に足を踏み入れた丸太が、熊徹と師弟関係を結び様々な経験を通して絆を深め、成長を遂げていく物語である。
背景描写が非常にきめ細かでリアリティがある細田作品。『バケモノの子』も同様で、センター街・渋谷図書館・代々木公園・スクランブル交差点など実在する渋谷がそのままの形で描かれている。
今回紹介した4作品を含め、渋谷を舞台とした漫画・アニメはみな描写がリアルだ。主人公達が現実にある場所で様々な冒険をしている様は、見ていてもわくわくするものである。壊されたり荒廃したりと色々な姿に変化してはいるが、渋谷の街に実際に足を運べば漫画の世界観をより一層感じられることだろう。