■超売れっ子の人気子役『こどものおもちゃ』加村直澄

 最後は1994年から連載が始まった小花美穂氏による『こどものおもちゃ』から、加村直澄を紹介する。「こどちゃ」は、人気子役の主人公・倉田紗南とクラスメイトの問題児・羽山秋人の恋愛を描いた作品で、1996年から約2年間に渡ってアニメ化もされた90年代の『りぼん』人気を支えた漫画のひとつ。

 加村直澄は、美しいルックスで女性ファンを魅了する大人気タレントだ。普段はクールだが、感情が昂るとどこからともなくトランペットを出して吹きならすという変な癖がある。

 同作はコミカルなタッチながら、学級崩壊や主人公の過酷な生い立ちなどヘビーな内容を描いた作品で、直澄は紗南と同じ「捨て子」という共通点があった。児童養護施設で1か月だけともに過ごした過去があり、紗南に対して親近感とともに好意を抱くようになる。

 芸能人同士ということもあり、恋の噂が絶えなかった直澄と紗南。ある日交際宣言というゴシップが出てしまい、それを見て傷ついた秋人はショックから他の女の子と付き合い始めてしまう。

 事実を知った紗南は悲しむが、直澄はそんなときも近くで彼女を見守り支えた。自分に対して好意が全くないと分かっていてもなお、彼女の幸せを一番に考えていたのだ。

 秋人が原因で笑えなくなった紗南が直澄に心を預けようとしたときも、「僕は…紗南ちゃんが…好きだよ でも…僕のこと好きなんて言う紗南ちゃんは嫌いだ!」とあえて突き放すようなことを言い、紗南に発破をかけた。どこまでも健気である。

 なお、原作漫画とアニメ版では2人の関係が変えられており、アニメニューヨーク編では撮影でアメリカに行って少しの間紗南と付き合っていた。

 なお、2010年に発売されたコミックス『Deep Clear』では大人になった直澄の姿を描いた番外編「Misty Blue」が収録されている。未読の人は手にとってみてはいかがだろうか。

 以上紹介した3人の他にも主人公にひたむきな愛を向ける男性キャラはいたが、全員に共通しているのは、誰より一途ということではないだろうか。当時の読者からは、「自分が付き合うならこっちがいい」といった推し発言も多かった。報われない恋をしていた彼らには、ぜひ幸せになってもらいたい。

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