今秋、あの『悪魔くん』がNetflixで完全新作アニメとして復活する。「悪魔くん」と呼ばれる少年が、世界を平和へと導くために悪魔の力を借りて戦う物語で、『ゲゲゲの鬼太郎』に並ぶ水木しげるさんの代表作だ。
はじまりは1963年の貸出漫画で、その後『週刊少年マガジン』『週刊少年ジャンプ』などにも連載、1989年(平成元年)にはテレビアニメ化され大人気となった。当時、小学生だった筆者も放送日である土曜の夜が楽しみで仕方なかったもの。そんな本作が、いよいよ2023年11月から新シリーズが配信されるのだ。
そこでその『悪魔くん』復活に先駆け、今回は平成元年版アニメ『悪魔くん』の思い出を振り返ってみる。前作を知っている人も知らない人も、新シリーズの配信に備え一緒に気分を高めていこう!
■正義の呪文「エロイムエッサイム」
「エロイムエッサイム、我は求め訴えたり」。『悪魔くん』といえば、まずはこのフレーズだろう。悪魔召喚に使われる呪文で、悪魔くんはこの呪文で仲間の悪魔を召喚し、世界の平和のために戦う。
「エロイムエッサイム」とは聞き馴染みのない言葉だと思うが、もともとは、14、5世紀ごろから19世紀までヨーロッパで広まったグリモワール(魔術書)の1冊、『赤い竜』に書かれていたフレーズだ。エロイムは「神よ!」、エッサイムは「悪魔よ!」というような、“神や悪魔への呼びかけ”の意味合いがあるらしい。
アニメ放送当時、小学生だった私がそんな意味などもちろん知るわけもなかったのだが、その響きにワクワクするような、でもちょっと怖いような"特別さ"を感じていたのを覚えている。
■水木しげるさんは魔法陣の元祖!?
『悪魔くん』で行われる悪魔召喚では、「エロイムエッサイム」の呪文のほかに不可欠なものがもう1つある。それは「魔法陣」だ。みなさんも一度や二度は漫画やゲームで見たことがあるのではないだろうか。文字や紋様が描かれたサークル状の図形で、そこから悪魔や召喚獣などが現れるアレだ。
これもちょっとビックリする話なのだが、日本で“魔法陣”という名称や、その魔法陣から悪魔が出現するという演出が一般化したのは、この『悪魔くん』がきっかけだったと言われている。
それまであったいわゆる“魔法円”は、悪魔から身を守るための結界であった。一方『悪魔くん』の“魔法陣”はその円を用いて悪魔を召喚する。水木さんの感性でオリジナリティ溢れる大胆な改変をしているのだ。
「エロイムエッサイム」の呪文を唱えると、その魔法陣が輝き十二使徒が召喚され敵と戦う。その展開がアニメヒーローものとして異色のカッコよさがあり、当時の視聴者である子どもたちを興奮させた。