漫画のキャラクターにリアルな存在感や固有の魅力を持たせるためには、作品によって色々な手法が使われる。特徴のある見た目だったり、他者にはないスキルの高さだったり、それらのギャップだったりと、場合によって様々だ。キャラクターの人気には初登場時の第一印象が与える影響が大きいので、最初に大事にすべきはやはり見た目だと言えるだろう。
誰かに似ているとか、どこかで聞いた名前だといったフックがあると、印象に残りやすい。そのため、著名人がモデルになっているキャラクターも多く、筆者は『グラップラー刃牙』シリーズにアメリカ歴代大統領を模したキャラクターが登場したときに「ここまでやるのか!」と思ってしまった。「オズマ」に「トラムプ」って……。
そこで今回は、明らかに著名人がモデルとなっているキャラクターが登場する漫画を紹介していきたい。
■『ろくでなしBLUES』有名ボクサーからお笑い芸人、あのバンドマンまで?
森田まさのりさんによる『ろくでなしBLUES』(集英社)は、ジャンプを代表するヤンキー漫画のひとつで、魅力的なキャラクターが数多く登場する。特に敵対する他校の生徒は主人公の前田太尊を苦しめる猛者ぞろいで、彼らとの熱い戦いが展開される。しかし、そんなキャラクターたちの名前を見ていくと、あることに気がつく。これって……実在のボクサーの名前が多くないか?
前田太尊の名前の元ネタは間違いなくマイク・タイソンさんだし、彼と対峙することになる四天王の名前も輝かしい戦績を残したボクサーにちなんだものばかりだ。鬼塚、薬師寺、葛西はいずれもそれぞれかなりの人気と知名度を持つボクサーたち、鬼塚勝也さん、薬師寺保栄さん、葛西裕一さんが元ネタだろう。そして作中のキャラクターもその名に相応しい強さを持っているからこそ、太尊との激戦が繰り広げられる。
しかし、元ネタとなったボクサーと各キャラクターは似ているのか? ということを見ていくと、全く似ていないのが面白い。
そんな濃いキャラばかりだが、元ネタになっているのはボクサーばかりではない。プロレスラーのマサ斉藤さんや、お笑いコンビの千原兄弟のほか、「THE BLUE HEARTS」のメンバーをモデルにしたキャラクターも登場しているのだ。キャラクターの名前やルックスなどの要素に作者である森田さんの好みが存分に反映されているのが伝わってきて、本編のアツい戦いとはまたちょっと違ったところにも楽しめるポイントがあり、旺盛なサービス精神が感じられる。
■『ONE PIECE』昭和の名優がそろい踏み?
尾田栄一郎さんによる『ONE PIECE』(集英社)は、言わずとしれた日本屈指の人気漫画だが、「作中に登場するキャラクターにモデルはあるのか?」という観点で見ていくと、これが意外にも多いのだ。しかもそれがかなり渋いキャラクターだったりもする。その代表格が海軍の三大将ではないだろうか。
三大将といえば、赤犬、黄猿、青キジと、名前だけ聞くとまるで桃太郎のお供のような存在に聞こえるが、実際は名だたる海賊を相手にできるほどの実力者ばかりだ。そんな三大将はそれぞれ昭和の名優たちに容姿がそっくりで、赤犬は菅原文太さん、黄猿は田中邦衛さん、青キジは松田優作さんがモデルとなっているのは明らかだ。さらに、赤犬、青キジに代わって後に三大将として登場した藤虎と緑牛は、それぞれ勝新太郎さんと原田芳雄さんにそっくりなのだ。そんなキャラクターたちが、悪魔の実を使って戦う姿はどこか笑えてしまう。
『ONE PIECE』には、他にも海外の有名人をモデルにしたキャラクターが何人も登場している。誰が誰を元ネタにしているのか、というのを探すのも楽しみ方のひとつだろうし、元ネタがわかると外見だけで中身が似ていないからこそのギャップも感じられて、それもまた面白い。