1983年に任天堂より発売された『ファミリーコンピュータ』は日本国内に空前のゲームブームを巻き起こしたが、海外でも『ニンテンドー・エンターテインメント・システム(NES)』なる、ファミコンをベースに作られた家庭用ゲーム機が発売されていたことをご存じだろうか。当時、NESでのみ遊ぶことのできた、数々の名作映画を原作としたゲームたちを紹介していこう。
■自キャラを強化して“サメ”に立ち向かえ! 『JAWS(ジョーズ)』
“サメ映画”といえば、パニックホラーものの定番となっているが、その始祖ともいえる作品こそ1975年に公開されたスティーヴン・スピルバーグ監督の傑作映画『JAWS』だろう。
海中から人々を襲うために迫ってくるサメの恐怖を、リアルかつ臨場感たっぷりに描いた一作だが、1987年にLJNより発売された『JAWS』は、NESでその世界観を追体験できるゲームだ。
ゲーム開始直後、プレイヤーは船を操作し海のフィールドを移動。しばらくするとRPGゲームのように、敵とエンカウントする。ここからいわゆる戦闘パートに移行し、ダイバーを操作することで海中へと潜り、クラゲや魚を水中銃で撃破していくこととなるのだ。
時折、海上に不穏な“背びれ”が出現するのだが、これに触れると作品のタイトルにもなっている“殺人サメ”ことジョーズとの戦いに挑むことができる。
いわゆるボス戦なのだが、初期状態ではジョーズにほぼダメージを与えることはできない。通常戦闘で手に入れた“貝殻”を集めてレベルを上げ、武器をアップグレードする必要があるのだ。
やっとの思いでジョーズの体力を削り切ると、いよいよ最後の大詰め……向かってくるジョーズを船に取り付けた巨大な“槍”で迎え撃つアクションパートへと移行。迫りくるジョーズを見事貫くことができれば、晴れてエンディングを迎えることができる。
上質なドット絵によって描かれたリアルなジョーズの姿はもちろん、RPGのような成長要素とアクションゲームを組み合わせたゲーム性は非常にとっつきやすい。原作通り“サメ”の脅威をテーマとしながらも、シンプルな作りで誰しもが楽しめる一作となっている。
■その理不尽な強さはまさに原作通り…?『FRIDAY THE 13TH(13日の金曜日)』
洋画のホラー作品といえば、“殺人鬼”という存在も外すことはできない。1980年に公開された『13日の金曜日』は、シリーズを通して凄まじいスプラッター表現やホッケーマスクをかぶった殺人鬼・ジェイソンの強烈なキャラクター性から人気を博した映画だ。
1989年にLJNより発売された『FRIDAY THE 13TH』では、そんな名作ホラー映画を、少し独特なアレンジを加えてゲーム化している。
ゲーム開始時、プレイヤーは6名のキャラクターから一人を選択し、原作で惨劇の舞台となったクリスタルレイクを散策していく。本作の目的はクリスタルレイク近辺の建物にいる子どもたちを救出することなのだが、道中では正体不明のゾンビが襲い掛かってくるため、これを撃破しながら目的地へと進まなければならない。
建物に辿り着くと子どもを救い出せるのだが、ここで突然、殺人鬼・ジェイソンが登場。画面が一転し、往年のボクシングゲームのような殴り合いのパートへと移行する。
ゲーム自体はシンプルな構造なのだが、特筆すべきはやはり殺人鬼・ジェイソンの凶悪さだろう。こちらの攻撃は何発も余裕で耐えるのだが、一方でジェイソンからの攻撃は数発喰らっただけで簡単にノックアウトされてしまう。
キャラクター6名が全滅する前に子どもたちを救出することができれば勝利なのだが、いかんせんゲーム全体の難易度はかなり高め。
その理不尽な戦闘力も一応は原作通りと言えなくもないのだが……アクションゲームとして生まれ変わってもなお、ぶれることのないジェイソンの怪物性がいかんなく発揮された一作である。