■息子を奪われる寂しさから暴走してしまった!? 娘に贖罪する母『ジョージィ!』ジョージィの母
『ジョージィ!』は、原作:井沢満氏、作画:いがらしゆみこ氏により、1982年より小学館の『週刊少女コミック』に連載された少女漫画だ。
主人公のジョージィは兄のアベルとアーサー、母親の4人で暮らしていた。しかし優しい兄たちとは裏腹に、母のジョージィに対する態度は冷たく、幼いころからジョージィだけは抱きしめもせず、物心ついたころには家の手伝いばかりさせていた。
やがて思春期を迎え、あることをきっかけにアベルとアーサーはともにジョージィを愛していることが発覚する。それに怒った母親は‘‘ジョージィは実の娘ではなく流刑者の子だ”と告げ、家から追い出そうとした。そう、実はジョージィは訳ありの美しい女性から託された子であったのだ。
ジョージィはそれを聞き、自分の実母が残した腕輪を手がかりにイギリスへと旅立つ。その後、ジョージィを育てた母親は病に倒れ、実は‘‘疎ましく思いながらもジョージイのことを娘として愛していた”と懺悔する。
夫はすでに亡くなっているうえ、2人の息子をジョージィに奪われそうになった母親の嫉妬心から、厳しい言葉を投げかけてしまったのだろう。最後はアーサーに見守られ、ひっそりと息を引き取るのであった。
本作では、80年代に多くあった継母が娘をいびる描写も多い。この役立たず!といって平手打ちをするシーンなどは衝撃的だった。しかし最後は愛情もあったことを口にしており、読者をほっとさせた。娘に対して素直に愛情表現ができなかったのは、血が繋がっていないことだけでなく、同性ゆえの接し方の難しさがあったのかもしれないと思う。
今回紹介した往年の名作少女漫画はおもに80年代に描かれており、当時はまだ母親が娘に厳しいしつけをするシーンも多かった。しかし裏には大きな愛情があったのも事実で、亡くなる寸前には娘への感謝や愛情を口にしているのが印象的だ。
今の医学ならもっと長生きできていたのに……と思ってしまうかわいそうな母親たち、せめてそのキャラクターの存在を心に刻みたい。