『ガラスの仮面』マヤの母に『ベルサイユのばら』ロザリーの母も…往年の名作少女漫画に登場するかわいそうすぎた母親たちの画像
フェアベルコミックス『ベルサイユのばら』第7巻(フェアベル)

 昔の少女漫画に出てくるヒロインは、みんな健気で一生懸命だ。そんな素直なヒロインを育ててくれた多くは彼女たちの親であるが、とくに母親からの影響は大きいだろう。

 しかし往年の名作少女漫画では、ときにヒロインの母親が悲しい最後を遂げるシーンも多い。愛する娘の幸せを願っていたのに、その将来を見ることなく亡くなってしまった母たち。今回はそんなかわいそうな母親の姿を往年の名作少女漫画から紹介したい。

■演劇を猛反対していた立場から最後は応援者に…『ガラスの仮面』マヤの母

 まずは、美内すずえ氏による舞台演劇をテーマに描かれた名作『ガラスの仮面』だ。

 主人公・北島マヤは母親の春と2人暮らし。春は中華料理店の住み込み店員として働いていて、貧しい生活を送っていた。マヤも仕事を手伝っていたが、演劇に夢中になるあまり出前を忘れるなど失敗ばかり……春はそんなマヤに厳しく接していた。

 ある日マヤは往年の大女優である月影千草と出会い、演劇の世界に行きたいと春に相談するが”母さんはそんなことはさせやしない”と大反対。それに反発したマヤは家を飛び出し、千草の劇団に入ったのをきっかけに次々と舞台に立ち、成長していく。

 春ものちにマヤが演劇界で成功しているのを知るが、そのときには結核に侵され、栄養失調が原因で目が見えなくなっていた。しかもマヤをサポートしていた速水真澄の策略により、春は山奥の病院に監禁されてしまう。

 自分の現状を知った春はマヤに一目会いたいと病院を抜け出し、吐血しながらもマヤの映画が上映されている都内の映画館にたどりつく。劇場内では主役を演じるマヤの声が響いており、生き生きと女優として演じている様子を見えずとも耳で感じとる春。そして「天国のお父さんみやってますか…?じょうずでしょう、ねえあなた…」と微笑みながら、そのまま息を引き取るのであった。

 春は当初マヤの演劇活動に反対し、”この出来損ない!”といった厳しい言葉も投げかけていた。しかしマヤと距離を置いたことで娘の幸せはなにかを客観的に見ることができ、最後はマヤの最大の応援者となったのだろう。それなのに、娘の素晴らしい演技をその目で見ることなく、さらに直接再会すらできずに亡くなってしまったのはあまりにも切ない。

■育ての親が与えてくれた愛情は計り知れない『ベルサイユのばら』ロザリーの母

 昨年50周年を迎えた池田理代子氏の『ベルサイユのばら』。主人公オスカルを愛し、公私にわたって支えたのがロザリー・ラ・モリエールである。

 ロザリーは貧しい市民の娘で、病気の母親と強欲な姉・ジャンヌと暮らしていた。ジャンヌは自分は王族の娘だと言って家を出てしまい、その後はロザリーが懸命に働き、病気の母親を支えていた。

 しかしある日、貴族の乗る馬車が母親を轢いてしまう。瀕死の状態のなか、母はロザリーに‘‘あなたは私の本当の娘じゃない、これまで世話ばかりかけて許しておくれ”と詫びる。そして”お前の本当のお母様は貴族のマルティーヌ・カブリエル…”という言葉を残して息を引き取るのであった。

 最愛の育ての母を失ったロザリーは、母を馬車で轢き殺した貴族への復讐を誓うのだが、実は加害者であるポリニャック夫人こそ、ロザリーの実の母親であった。ロザリーは復讐心を持ちつつも、オスカルのいるジャルジェ家に引き取られ生活をするうちに穏やかな心を取り戻していく。

 貧しくともひたむきに生き、献身的にオスカルを支えたロザリーの性格は、亡くなる寸前までロザリーの身を案じた優しい育ての母による影響が大きいだろう。

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