『SLAM DUNK』に登場する安西先生は、ぽっちゃり体形の白髪のおじさんである。主人公・桜木花道にはよく二重アゴをタプタプされ、お世辞にも有能そうな監督には見えない。しかし実は安西先生は「白髪鬼」と呼ばれるスパルタ指導で知られたバスケ強豪大学の名監督だった過去がある。本作ではスパルタ指導こそなかったものの、たしかに湘北高校の未熟な選手たちを戦術面でも精神面でも支えていた。
そこで今回は、スポーツ漫画に登場する“一見無能そうに見えるけど、実は有能な名監督”を紹介していく。
■風貌も態度も“監督らしからぬ”キャラだった『タッチ』柏葉英二郎
まず、あだち充氏の『タッチ』に登場する柏葉英二郎を紹介する。柏葉英二郎は、体調不良を起こした西尾茂則監督に代わり、明青学園野球部に赴任してきた監督代行である。
その見た目は、まるで“コワイお仕事”をしているようなパンチパーマにサングラスをかけた強面の男性で、高校野球の監督らしからぬ風貌をしている。実際、柏葉の監督代行就任は手違いからであったし、過去の出来事から指導にも横暴さが目立っており、グラウンドでも飲酒をするなどとんでもない監督であった。
とはいえ、野球の知識や実力は本物で、達也と対戦した際には見事なバッティングやピッチングを披露。そして、自分の“シゴキ”についてくる部員たちや、西尾監督の心からの謝罪と償いにより、だんだんと心境の変化を見せはじめる。
第23巻「おまえなんだぜの巻」では、甲子園出場のかかる決勝戦でイマイチ調子が上がらない達也に対して「全国13万の高校球児の夢と栄光を手に入れるのは、——上杉達也、おまえなんだぜ」「上杉和也の代役を気どって打たれたんじゃ困るんだよ」と、ハッパをかけ、本調子を取り戻すきっかけを与えている。
そして、終盤の8回、9回には監督として的確な采配を振るい、明青野球部を見事甲子園に導いた。ちなみに、強面に見えるサングラスは眼の病のためにかけていた。
■とぼけた態度でも監督としての実力は確か 『アオアシ』福田達也
次に、小林有吾氏の『アオアシ』から福田達也を紹介する。福田達也は、主人公・青井葦人が入団した「東京シティ・エスペリオンFC」ユースチームの監督である。
普段はとぼけた態度を取ることも多く、ラフな服装で無精ひげまで生やしているので、一見冴えないただの30歳過ぎの独身男性である。
しかし、もとはエスペリオンの主力選手で、スペイン1部でもプレー経験があるサッカー界の逸材だった福田。怪我により引退したのち、その経験を生かしエスペリオンを世界クラスのクラブにするために動き、選手やスタッフからの信頼も厚い。
第1巻「ファーストタッチ」では、愛媛の田舎でサッカーをしていた葦人の才能をいち早く見出し、東京のクラブであるエスペリオンユースのセレクションに誘っていた。
そんな“先見の明”はもちろん、その後も葦人の才能を最大限生かすため、FWからSBにコンバートさせるなど、選手を見る目と戦術眼は確かだと言えるだろう。