■息子への愛情があればできないことはない? 『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜』磯兵衛の母

 規格外の戦闘力……といえば、やはり“バトル漫画”に登場するキャラクターが思い浮かぶが、一方で“ギャグ漫画”の分野にも、とんでもない力を発揮した強すぎる母親が登場している。

 2013年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された、仲間りょう氏の『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜』は、終始、浮世絵のテイストで描かれるなんとも型破りなギャグ漫画である。

 武士になるために修行の日々を送る主人公・磯部磯兵衛だが、自堕落に過ごす彼を陰ながら支える人物こそ、磯兵衛の母だ。

 作中で明確に名前が出た場面はなく、「母上」や「母上様」といった形で呼ばれている。あまりにも過保護であることをうっとおしく思った磯兵衛からは「母上様(クソババア)」と呼ばれるなど、その愛情が空回りしている感が否めない。

 行きすぎた愛情を持つ“親バカ”なのだが、ギャグ漫画とはいえ彼女は徐々に人間離れした数々の現象を引き起こすようになっていく。

 空間に穴を開けて登場するなんてことは朝飯前で、磯兵衛に厳しく当たる武士学校の先生と戦う際には、空中に浮いたり、大地を巨大な人形として具現化して操ったりと、異常な戦闘能力を披露した。

 極めつけは“地球の自転”を利用するといった、自然現象や物理法則を活用した力を見せつけたりと、もはや“なんでもあり”なキャラクターへと変貌してしまったのである。

 なぜそこまでの実力を秘めているかは謎だが、過去に忍者学校のエースとして活躍していたりと、母親になる以前からその凄まじい能力を発揮していたようだ。

 それもすべては息子である磯兵衛のことを思うからこそ……母親としての愛情が意外な方向に突き抜けてしまった、なんとも奇妙で魅力的なキャラクターだ。 

 

 母親といえば漫画作品のなかでは主人公やキャラクターたちを支えるサポート役として描かれることも多いが、今回紹介したキャラクターはその凄まじい戦闘力で読者も予想だにしない活躍をみせた。現実世界のそれとは一風違った“母親”の強さに、驚かされること間違いなしである。

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