■ホラーでありながらRPGとしても良作『パラサイト・イヴ』
1998年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)より発売されたPSソフト『パラサイト・イヴ』は、瀬名秀明氏の同名ホラー小説を原作に、ホラーとアクションを融合させたRPG作品となっている。
原作小説では日本が舞台だが、本作ではアメリカ・マンハッタンを新たな舞台に刑事のアヤ・ブレアが、ミトコンドリア生物たちを相手に銃火器や特殊能力の「パラサイト・エナジー」を武器に立ち向かっていく。
本作はハリウッドのスタッフも制作に携わっており、その美麗なムービーの数々は必見。PSというハードの能力を存分に生かし、どこかグロテスクなホラー描写も美しく、鮮やかな映像で表現している。
とはいえ、ミトコンドリアという存在が引き起こす怪現象の数々や、人間が得体の知れない存在に変貌していくおぞましさは、終始プレイヤーに生物的な恐怖を見せつけてくれる。
その一方で、RPGとしての完成度も非常に高く、ミトコンドリアの力を魔法のように使いこなし戦闘における特殊能力として活用できるのは、シナリオの持つキーワードを違和感なくゲームのシステムに落とし込んだ素晴らしい点だ。
登場人物の一人一人も実に個性的でキャラが立っており、とくに主人公であるアヤが人間とミトコンドリアという二つの種の狭間で葛藤するシーンは、本作の見どころの一つといえるだろう。
クリア後にもしっかりとやり込み要素が用意されていたりと、一度クリアしただけでは終わらないコンテンツの数々も嬉しい点だ。美しいグラフィックで描かれるホラー描写と、RPGとしてのしっかりとした面白さ。そして原作の要素を受け継いだ骨太なシナリオと、なんとも隙のない一作となっている。
一口に「ホラー」といってもその種類は実に多種多様で、噂に生物に心霊写真と、ゲームごとに異なる切り口で“恐怖”を演出してくれる。プレミアがつき入手困難なものも多いが、画面の向こう側に展開される“恐怖”の数々に対峙してみるのも一興かもしれない。