『極悪がんぼ』に『ハイパーインフレーション』も…金の力でビッグになる“痛快成り上がり漫画”3選の画像
イブニングコミックス『極悪がんぼ』第1巻(講談社)

 今期の夏ドラマで注目を集める『トリリオンゲーム』(原作:稲垣理一郎氏、作画:池上遼一氏)。一兆ドルを稼いで“この世のすべてを手に入れよう”と2人の男性が奮闘していくというストーリーで、「原作そのまま!」「面白い」と話題だ。

 本作のように何者でもない主人公が大金を稼いで成功を目指す“成り上がり漫画”は、読者の夢と野望を刺激するジャンルのひとつだ。逆境に苦しむ主人公が知略や努力で成功をめざす姿には、つい応援したくなる魅力がある。大金を狙うキャラクターたちの頭脳戦にハラハラできるのも面白いところだ。

 今回はそんな“お金”をテーマとした成り上がり漫画のなかから、筆者お気に入りの3作品を紹介していく。

■裏社会のフィクサーへ駆けあがれ!『極悪がんぼ』

 まずは、2001年から2009年にかけて『イブニング』(講談社)で連載された『極悪がんぼ』だ。原作は田島隆氏、作画を東風孝弘氏が担当しており、2014年にはフジテレビ月9枠でドラマ化も果たしている。

 主人公・神崎守は「中卒・資格なし・定職なし」と、絵に描いたようなうだつの上がらないダメ男だ。そんな彼が法律を悪用して稼ぐ“事件屋”になり、底辺からのしあがっていく……というストーリー。

「ビッグになりたい」という漠然とした夢を叶えようともがき続ける神崎は、ときには失敗して大損したり、命を危険にさらされることも。それでも諦めず、のし上がっていく成長ぶりがとても痛快だ。

 また、“お金”に関するエピソードが盛りこまれているのも、本作のポイントだろう。クレジットカードの偽造に裏ビデオ屋、選挙の裏事情にいたるまで、行政書士でもある田島氏のアイデアが散りばめられたエピソードはリアリティ抜群。本作はあくまでフィクションなのだが、読んでいると「実話なのかも……?」とドキドキしてしまう。

 ちなみに本作には『激昂がんぼ』『がんぼ ナニワ悪道編』といった続編もあり、一流の事件屋となった神崎の活躍も見られる。彼の成長にとても感慨深くなれる続編なので、本シリーズを読む際はぜひ『極悪がんぼ』から読んでいただきたい。

■切り札は”使えない贋札”『ハイパーインフレーション』

 次に紹介するのは、住吉九氏が描く『ハイパーインフレーション』だ。2020年から2023年にかけて『少年ジャンプ+』(集英社)で連載され、2023年3月、第6回「アニメ化してほしいマンガランキング」では第1位を獲得するなど、読者から熱い支持を受けている作品である。

 舞台は、帝国による奴隷制度が存在していた時代。奴隷として差別されるガブール人の少年・ルークは「子どもを作る力」の代わりに「世界を買えるだけの金」を神に願い、本物とそっくりな贋札を大量に生みだす能力を授かる。しかし、能力で生みだした贋札は通し番号がすべて同じという欠点があった。

 使えば贋札とバレる切り札を武器に、ルークは奴隷商人・グレシャムや帝国を相手に自由を勝ちとるための“商談”に臨んでいく。それぞれの陣営が利益のために行動する頭脳戦が、本作の醍醐味だ。

 筆者が本作を読むたびに感心させられるのが、キャラの会話劇を通して経済知識を解説するエピソードだ。「贋札作りはなぜ悪いことなのか?」「インフレとはどういう状況なのか?」といった疑問をわかりやすくまとめており、とても勉強になる。ファンのなかには「教科書に載せるべき」と熱弁する人がいるほどの出来なのも分かる。

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