■2人の男の夢と欲望を描いた『銀と金』
最後は、1992年から1996年まで『アクションピザッツ』(双葉社)で連載された『銀と金』を紹介したい。本作は『カイジ』などで有名な福本伸行氏の作品だ。
本作では、バブル崩壊直後の日本で、野心を持つ悪党たちの火花散るマネーバトルが描かれている。裏社会のフィクサーとして生きる壮年の男・平井銀二と、金はないが類まれな強運を持つ若者・森田鉄雄。この2人の主人公がコンビとして活躍するバディものだ。性格も立場も異なる2人が日本の頂点を目指していく……という成り上がりストーリーが、読者の胸を熱くさせる。
平井と森田が互いに抱く感情も見逃せない。平井は森田を悪党の世界に勧誘し、修羅場を超えるにつれて対等なパートナーとして認めていく。やがて「自分が死んでも森田が代わりになってくれる」と信頼するように。
一方、森田は何者でもなかった自分を見つけてくれた平井に強く憧れる。やがて「平井銀二を超える“金”と呼ばれたい」という夢に目覚め、そのために金を稼ごうとするのだ。裏切りと策謀が渦巻く裏社会において、心から認めあう2人の関係性も本作の見どころである。
連載終了から27年経った今も「連載を再開してほしい」というファンの声が散見される本作。読む価値のある不朽の名作だと思う。
現代人にとって、お金は切っても切れない存在である。そんなお金を稼ぎまくり、その先にある夢を掴もうとする主人公が繰り広げる壮大なドラマに、私たちはどこか共感を抱きながら夢中になるのかもしれない。
とはいえ、お金のために危ない儲け話に手を出すのは絶対にNGだ。一か八かの成り上がりロマンは、フィクションだけで楽しもう。