■わずかな時間でありったけの愛を伝えた『NARUTO −ナルト−』うずまきクシナ
最後に岸本斉史氏の『NARUTO −ナルト−』より、ナルトの母親・うずまきクシナを紹介しよう。
九尾をその身に封印された人柱力(同作では尾獣とよばれる魔獣を体に宿した存在を人柱力とよぶ)であるクシナは、四代目火影・波風ミナトとの間にナルトを身籠り、その誕生を心待ちにしていた。
妊娠すると九尾の封印が弱まってしまうこともあり、ナルトの出産にはミナトと三代目の妻・ビワコの立ち合いのもと行われることとなる。無事にナルトの出産を終えたかに思えたが、しかしその直後、写輪眼を有する仮面の男の奇襲を受け、クシナに宿る九尾の封印を解かれてしまうのだ。
尾獣を抜かれた人柱力は通常即死するとされているが、クシナは出産後で体力を激しく消耗しているにも関わらず、その強靭な生命力で意識を保ち続ける。
木の葉の里を救うため、ナルトに九尾を封印する決断をしたクシナとミナトだが、九尾の攻撃からナルトを庇って、2人とも致命傷を負うこととなる。
息も絶え絶えになりながら、静かに眠るナルトに向けて母親として最後の言葉を送り、その生涯を終えるのであった。
ナルトを生んだ直後に命を落とすという悲運な最期を迎えたものの、僅かな時間の中でありったけの愛をナルトに注いだ偉大な母として、多くの読者を感動させたキャラクターである。
どの作品においても、母親キャラは得てして非業の死を遂げてしまう立ち位置にいるのは否めない。今後も各作品に登場する母親キャラの壮絶な最期に期待している……というわけでは毛頭ないが、極限下で子どもたちに注がれる母親たちの無償の愛にはいたく感動させられてしまうのも事実だ。