『美味しんぼ』栗田ゆう子も!「こいつの言う事なら聞いてやる」凶悪キャラがコロリ? “手なずけ上手キャラ”の処世術の画像
ビッグコミックス『美味しんぼ』第111巻(小学館)
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 漫画やアニメに登場するキャラの中には、絶対に誰の言うことも聞かなそうな凶悪なキャラですらも「手なずけて」しまう人物がいる。相手の放つオーラに少しも屈することなく、自然体で入っていける、見習いたい処世術。そこで今回は、誰もが恐れる強キャラの心をあっさりと掴んでしまった名作漫画のキャラたちを紹介していきたい。

■『はじめの一歩』板垣学

 まずは森川ジョージ氏による『はじめの一歩』(講談社)から板垣学。同作には性格に一癖も二癖もあるボクサーばかりが登場するが、試合で勝つことに他人との馴れ合いはいらない……そんな気持ちだから、世間と逸脱してしまうのかもしれない。

 そんな屈折した考えの持ち主のひとりが間柴了。間柴は両親を早くに亡くし、拳ひとつで稼ごうと決めていた。そのため友人を作らず、職場の同僚とも仲良くせず、他人とずっと距離を置いて生きてきたのだ。ボクシングでは反則しても勝つべきというスタイルで、対戦相手を常に見下す、強面の極悪ボクサーにしか見えなかった。

 だが、そんな誰もが恐れをなす間柴にグイグイ切り込んだのが主人公・幕之内一歩の後輩である板垣。彼は年上の間柴に普通に絡むばかりか、一緒に買い物までする仲となる。

 板垣は笑顔のかわいいイケメンキャラだが、実家は貧しく意外な苦労人でもある。金に苦労した経験が、間柴と通じ合うものがあるのだろう。これまで間柴に真正面からぶつかる相手がいなかったからこそ、間柴にとっても新鮮だったのかもしれない。

■『美味しんぼ』栗田ゆう子

 続いては、原作・雁屋哲氏、作画・花咲アキラ氏による料理漫画『美味しんぼ』(小学館)より。

 同作は料理だけではなく、海原雄山と山岡士郎親子が絆を取り戻すヒューマンドラマでもある。そんな親子の不仲を解決するのに、栗田ゆう子は欠かせない。雄山といえば美食家として政界にも名を轟かせている人物で、誰にも屈しないスタイルで生きてきた。権力者を前にしても自分の意見を平然と口にして一蹴する、そんな強さを持つ雄山が「こいつと話していると調子がおかしい……」となったのが栗田だった。

 栗田はいつも純粋に雄山と山岡の仲を取り戻すことだけを考えていた。その真っ直ぐな気持ちが雄山には密かに響いていたのだろう。何度も雄山の元を訪問する栗田のことを少しずつ気に入り、時には自分の亡くなった妻とも重ね合わせてしまっている。そのため、栗田のことを「たかが小娘が…」と無視することもできなくなったのだ。

 山岡と栗田の披露宴に、雄山は「士郎のためでもない。おまえのためにな」と話し、栗田のために参加を決意している。そして、栗田が子どもを妊娠していると噂が出たときには、体調を崩して倒れた栗田のことを本気で心配していた。読者の誰もが「あの雄山が!」と驚く反面、どこかほっこりとさせられた名シーンだ。

 連載初期の血も涙もない鬼の雄山が、時間とともにゆっくりと優しくなっていく姿を見せられるようになったのも栗田の力が大きい。孫が出来てからの雄山はまるで仏のよう。初期と見比べてみるのも面白いだろう。

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