(2ページ目) つい応援してしまう名シーンの宝庫！『湘南純愛組！』『今日から俺は!!』など名作ヤンキー漫画に欠かせない「ヘタレキャラ」が土壇場で見せる“漢気”

■好きな女のために体を張った『今日から俺は!!』谷川安夫

　西森博之氏による『今日から俺は！！』（小学館）は、テレビドラマや映画の大ヒットでも話題になったヤンキー漫画だ。その中に登場する紅羽高校の谷川安夫は、作中でも最弱レベルでケンカが弱いヘタレだが、主人公の三橋に負けず劣らず口が達者なキャラクターだ。紅高の番長である今井を慕う谷川は、今井がピンチの時には、自分に実力がないことを自覚しているため、諦めて真っ先に助けを呼ぶことも多く、ある意味では賢いとも言える。

　しかし、そんな谷川にも男として譲れない状況があった。それが、サイパム編で好きになった女子大生のために、自分の力だけで立ち向かおうとしたことだ。それまで、今井と一緒に巻き込まれる形で戦うことはあっても、自分の意志で戦うことはなかった谷川が、「絶対に許せない！」という気持ちを表に出して自ら動くのはこれが初めてだった。しかも相手は拳銃を所持し、怪しい粉の取引をするような連中なので、本来は高校生がどうにかできるような相手ではない。

　しかし、谷川はそんなことは関係ないとばかりに、悪の元締めである純の部下から奪った白い粉を持って現れ、海に捨てると脅しをかける。しかし、悪党の純がそんなことで臆するはずもなく、逆に脅し返してくる。結局は脅しにビビって止めるのか？そう思った次の瞬間、谷川は躊躇することなく白い粉を海に向かって投げ捨てた。

　これには側にいた三橋や伊藤も驚いたが、読者も「あの谷川が危険を顧みずに漢気を見せるなんて……」と目が点になったことだろう。好きになった女性のために体を張った谷川のカッコよさに筆者も思わず感動してしまった。

　ヤンキー漫画に登場するヘタレキャラには、どこかで自分の殻を破るようなエピソードが存在することがある。それは自らの弱さを見つめ直して克服する、という成長のストーリーであり、読者としても自分の身に引き寄せて彼らを応援してしまうのだ。冒頭で触れた『東京リベンジャーズ』の花垣武道がまさにそういうキャラクターで、ヘタレキャラを主人公に据えていることが独特の味となっているとも言える。これからもヤンキー漫画がある限り、新たなヘタレキャラが思わぬ漢気を見せる名シーンが生まれていくことだろう。