■数々の伝説を打ち立てた“迷作”界の重鎮…『たけしの挑戦状』
“迷作”……という存在について語るうえで、タイトーより発売された『たけしの挑戦状』を忘れてはいけないだろう。数々の意欲作が存在するなかでも、本作はゲーマーたちの間で“伝説”として語り継がれる一本だ。
タイトルにある通り、お笑いタレントであり映画監督としても有名な北野武さんが監修した本作は、主人公のサラリーマンを操作し、どこかに眠る“財宝”を求めて世界を冒険していくアクションゲームとなっている。
本作のパッケージの裏には、北野武本人からの「まず、今までのファミコンソフトと同じレベルで、この作品を考えないようにして欲しい」というメッセージが記されているのだが、その宣言に違わぬとんでもない仕様の数々が、プレイヤーの度肝を抜くこととなった。
まず最大の特徴は、本作の自由度の高さと選択肢の豊富さである。これだけを聞くと良い点のようにも思えるが、なにせその内容が無茶苦茶なものばかりで登場人物を殴ったり、妻と離婚して慰謝料を払ったりと、物語冒頭からやりたい放題なのだ。
また、ノーヒントではとても解き明かせないギミックも多く、“リアルに1時間待機する”や“2Pマイクを使って声を出す”といった、一般的なゲームの攻略法からは逸脱した奇想天外なものばかり……。
これだけの膨大かつ巧妙すぎる謎解きの数々が用意されていながら、なんとクリアまでの正解ルートは一つしか用意されてないという。自力でエンディングに辿り着くのは至難の業と言えるだろう。
高い自由度と暴力が入り乱れる殺伐とした世界観は、のちに発売される『Grand Theft Auto』や『龍が如く』といった作品にも通ずるところがあるが、いかんせんファミコン全盛期の時代においては、前衛的すぎたと言わざるをえない一作である。
世に多くの“名作”が生み出されるなかで、オリジナリティ溢れる作品を目指した結果、とんでもない“迷作”となってしまったタイトルは数多く存在する。その攻めすぎた内容や仕様の数々は、今なおゲーマーたちの間では話題となり、脈々と語り継がれ続けている。