■セリフの読みやすさが電子にピッタリ! 続きが気になって仕方ないストーリー展開
また、『静かなるドン』は複雑なシーンでも比較的セリフが少なく、読みやすい。新田氏の持ち前の画力で内容が分かりやすく表現されているので1冊を読み終えるスピードが早い。結果的に現在の電子書籍の形式にピッタリの作品であり、読者の心を掴むことに成功しているのだろう。
また、ストーリーはだいたい5話くらいでオチがついているのだが、次の話への伏線が非常にうまく、そのストーリーは解決しつつも次の問題はどうなっていくのかが気になって読者は読むのをやめられない。
そして、静也が問題を解決すればするほど、ヒロイン・秋野明美との関係も複雑になり、ラブストーリーもうまく絡み合っていく。お笑い、シリアス、ラブストーリーの要素が楽しめる希少な作品なのだ。
筆者が『静かなるドン』をはじめて読んだのは高校生のとき。教室で回し読みが始まり、クラスの誰一人途中で離脱することができなかった。それほど魅力が詰まった作品であり、20年以上経った今でも読みはじめると徹夜である。
本作は、続編となる『静かなるドン-もうひとつの最終章-』の連載が、2023年5月より『グランドジャンプ』(集英社)ではじまったばかり。
筆者的には1巻から読むのをおすすめするが、実は途中からでも十分楽しめる作品だ。まだ未読の人は、ぜひ一度“ドンの世界”を楽しんでいただきたい。