■かつていじめられっ子だった練習生がタイトルマッチへ…『はじめの一歩』山田直道
最後は、森川ジョージ氏による『はじめの一歩』（講談社）に登場する山田直道だ。
一歩にとってはじめての鴨川ジムの後輩であり、“いじめられっ子”という境遇も似ている。初登場時には過酷なロードワークで嘔吐してしまい、鷹村から「ゲロ道」とあだ名を付けられてしまった。
山田は一歩に憧れており、練習生ながら地道に努力を重ねて地獄の合宿も乗り切り、必死に鴨川メンバーの一員となっていく。念願のプロテストに合格したところで親の都合で青森へ引っ越すこととなり、一歩との別れのスパーリングで成長した証を見せつけていた。
そして八戸拳闘会から「ハンマー・ナオ」のリングネームでプロデビューし、接近戦で打ち合いに持ち込むことから、各ジムのホープたちのかませ犬として試合を組まれていく。
ところが山田はその状況で顔も変形するほど過酷な試合を勝ち進み、とうとう一歩とのタイトルマッチまでたどり着いた。スキンヘッドで眉毛も剃っており、とてもかつての“ゲロ道”とは思えない外見で、先輩だった青木や木村もビビっていたほど。
この試合は、一歩にとっても重いものであったな。伊達が世界戦で敗北して引退し、バトンを受けた直後の試合がまさかの溺愛した後輩との一戦。結果的に一歩の圧勝となるのだが、優しい性格の一歩が可愛がっていた後輩を力の限り打ちのめしていく姿は、大きな転機となったといえよう。
もちろん、山田にとっても大きな転機となったはずだ。鷹村も「ゲロ道なりに ボクサーとして 濃密な時間を 過ごした証拠だ」と成長を認めていたし、気付かれないように出した反則行為も鴨川会長をして「ハンマー・ナオが巧い」と唸らせていたほど。
最後は一歩のもとへと駆け寄ることもなく、全力を尽くしてくれた憧れの先輩に感謝して去っていった。カッコいいぜ、ハンマー・ナオ！
さて、どのキャラも味わい深い脇役キャラだったものだ。ポップはほとんど主役級の扱いになっていたので例外ともいえるが、脇役がカッコいいからこそ主役も映えるというもの。今後も頼もしい脇役キャラの登場が楽しみだ。
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