『ドラクエ』シリーズにセーブ機能が存在しなかったころ、入力するだけでキャラクターが最強状態になる、特殊な“復活の呪文”が有名になった。同様に、手軽に“最強”、“無敵”状態を生み出すことができる裏技が数多く発掘された当時。思いがけない裏技に興奮した一方、そのバランスブレイカーっぷりにどこか落胆してしまったファミコンソフトの裏技について見ていこう。
■強い、早い、けど物足りない…? “最強コマンド系”裏技
やはり数々の裏技のなかでも、『ドラクエ』のように決まったパスワードを入力することで、はじめから強い状態を作り出してしまう……というタイプのものは各作品に多く見られた。
1986年にナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)から発売された『ワルキューレの冒険 時の鍵伝説』にも、ゲームのバランスを崩壊させてしまいかねない、数々の「最強パスワード」が存在する。
アクションとRPGの要素を組み合わせた本作には、レベルやHPといったお約束の概念がいくつも登場するのだが、この裏技を用いると、冒険開始時からこれらがずば抜けた状態でゲームを始めることができるのだ。
体力の値が“上限値の999を超えてしまう”ものや、ゲーム開始後に“宿に泊まるだけでレベルが81になる”という、数々のとんでもないパスワードが存在し、この状態でゲームを始めれば苦戦を強いられることはまずないだろう。
主人公である可憐な戦士・ワルキューレが、桁違いのステータスで相手を薙ぎ倒していく姿はまさに“無双”状態。爽快感はあるものの、ゲームの難易度自体は崩壊してしまうため、ご利用は計画的に……といったところだ。
■完全無欠だけど面白さが激減? “無敵系”裏技
1983年にアーケード版が生み出された『ゼビウス』(ナムコ 現:バンダイナムコエンターテインメント)は、縦スクロールシューティングとしての高いクオリティを誇り、多くのファンを獲得した名作ソフトである。
そんな本作で有名な裏技といえば、一気にゲームのバランスを壊してしまう“無敵モード”だろう。タイトル画面で“とある操作”をすると、なんと自機が無敵状態になり、敵機や弾に当たっても敗北することはなくなる。
一応、命中判定自体はあるようで、弾などに当たると爆発音は鳴るのだがゲームオーバーになることもなく、そのままプレイすることが可能。群がる敵や弾幕を避ける必要もなく、堂々と正面突破することが可能なのだ。
その圧倒的な戦闘力に酔いしれてしまいそうだが、一方でこの裏技にすぐに飽きてしまった……というプレイヤーも少なくはないようだ。なにせ、敵の攻撃をいかにかいくぐるかという点も本作の醍醐味なのだから、プレイヤーからすれば向かってくる敵を淡々と撃ち落とすだけになってしまう。
また、1985年に横スクロールシューティングゲームとして世に送り出された『超時空要塞マクロス』(バンダイ)は、さらにお手軽かつコマンドなしに実現できるとんでもない裏技が隠されていた。
本作は今なお根強いファンを持つ人気作品『超時空要塞マクロス』をモチーフとした横スクロールアクションで、その難易度はなかなか高め。エンディングまで辿り着くのは至難の業なのだが、そんな高難易度に苦心するプレイヤーにとっての救済措置とも呼べる、異色な無敵系裏技が存在する。
それはなんと、“画面の右下にいる”というもの。その位置にいるだけで、敵機も放たれる弾もギミックも、いっさい自機に触れることがないのである。
高難易度な本作を突破するための起死回生の裏技……に思えるのだが、プレイヤーからすればただ右下にいることしかできないので、変形する必要もなければ弾を打つ必要すらない。
敵が飛び交い、背景がスクロールしていくのを観察していることしかできず、もはやゲームをプレイしているとは言い難い、どうにも退屈な状態が作り上げられてしまう。
シューティングゲームにおいて、やはり“死なない”という状況は、ゲームそのものを致命的に退屈にしてしまうのかもしれない。