2023年6月22日に、『ファイナルファンタジー』シリーズ最新作『ファイナルファンタジー16』が発売となった。同作はPS5用に作られたアクションRPGで、このタイトルをプレイするためにPS5の購入を検討しているというファンも多いのではないだろうか。
ファミコンからスーファミなど、ゲーム機が次の世代にバトンタッチする時期は、新しいゲーム機での表現に目を奪われがちだが、その移り変わりの時期にこそ名作が潜んでいるもの。たとえばすでに“第5世代”と呼ばれるセガサターン(1994年11月)やプレイステーション(同年12月)が誕生していた1995年11月には『ロマンシング サ・ガ3』が発売され、同年12月には『ドラゴンクエストVI 幻の大地』が発売。いずれも大ヒットを記録している。そして翌1996年3月には『スーパーマリオRPG』が発売されており、こちらは今なお人気が高く、6月21日にリメイク作の制作が発表されるやいなや、ツイッターで歓喜の声が広がった。
この頃のソフトは、ハードの性能を最大限にまで引き出したタイトルが多く、グラフィックも美しい。そこで今回は、スーファミ末期に発売された美麗なグラフィックの名作をいくつかピックアップして振り返りたいと思う。
■3D的な表現で恐怖を与えた『スーパードンキーコング3』
スーパーファミコンで、グラフィックが美麗なゲームといえば『スーパードンキーコング』シリーズを思い浮かべる人は多いのではないだろうか。
シリーズ最初の『スーパードンキーコング』(1994年)の時点で、すでに他のソフトとは一線を画しているグラフィックがインパクト抜群であった。そこから『スーパードンキーコング2 ディクシー&ディディー』(1995年)で洗練され、1996年11月に発売された『スーパードンキーコング3 謎のクレミス島』でさらなる進化を遂げることとなった。そのグラフィックはCMで「スーパーファミコン史上最高画質」と謳われており、スーファミソフトの中でも最高峰である。
この美麗なグラフィックは、プリレンダリングされたCGモデルをスーパーファミコンに取り込むという荒業で実現されている。にもかかわらず、キャラクターや背景は処理落ちせずに滑らかに動いているし、とてもスーパーファミコンで表現できるグラフィックとは信じられない、まるでオーパーツのような作品である。
ただその滑らかなグラフィックな分、恐怖も倍増しているのが『ドンキー3』でもある。イギリス・レア社によって作られた同シリーズは、場面場面で恐ろしい敵やステージが待ち構えているのが特徴で、本作ではその点もピカイチ。目が血走ったタル型のボス「ベルチャ」や、滝の裏から目玉をギョロリとさせるボス「スクワーター」、雷におびえながら進む「カミナリに気をつけろ」や、のこぎりから逃げ続ける強制スクロール「ハラハラのこぎり」など、多くのプレイヤーにトラウマを植え付けたに違いない。
本作は2020年からスーパーファミコン Nintendo Switch Onlineにて配信されているが、今なお魅力が衰えないスーファミタイトルのひとつだ。
■テイルズシリーズの原点『テイルズ オブ ファンタジア』
今ではすっかりおなじみのシリーズとなった『テイルズ』シリーズだが、シリーズ最初のタイトルである『テイルズ オブ ファンタジア』はスーパーファミコンからの発売だった。
こちらも1995年12月というスーファミ末期に発売されたゲームで、ドット絵のグラフィックの書き込みが凄い作品。その美しさはゲームを起動した直後から発揮されており、
「主題歌あり」「声あり」なことにまず驚かされる。そして『ああっ女神さまっ』『逮捕しちゃうぞ』の藤島康介氏による一枚絵の後にタイトル画面があらわれるが、薄暗い森林に一筋の光が差す背景描写ひとつとっても美しさに圧倒される。
ようやくゲームをスタートして主人公の名前入力となるが、ここでも藤島キャラの表情が、忠実なタッチでドット絵で再現されていることに驚く。このデザインは、名前入力画面の他にはステータス画面のみで見ることができるが、ゲームを普通にプレイする際にほとんど見る機会が無いのが残念なほど。
他にもアイテムの一つ一つにグラフィックが用意されていたり、神殿などの装飾も、自然の表現と同じく細かく書き込まれていて、ついついじっと見てしまいたくなるほどだった。
同作は『ドラクエ6』のわずか6日後に発売という、ビッグタイトルに紛れたスタートとなったが、改めて振り返ってもスーファミではこれ以上ない美しいソフトだったのは間違いないだろう。