ロボットアニメの醍醐味といえば、なんといっても主人公などが搭乗するロボットによって繰り出される必殺技や武器のギミックなど、バトルシーンの熱い展開だろう。そういったシーンの数々には、視聴者の心を鷲掴みにするような演出、いわゆる「神演出」と呼ばれるものが数多く存在する。
その中でも、必殺技を使用した後に機体や武器から排熱・放熱することで冷却を促す様子を描写したシーンに心躍るロボットアニメファンも多いだろう。見た目は多少地味だが、ロボットアニメとしての設定やリアリティへのこだわりが感じられる「神演出」の1つだ。
この記事では、そんな武器使用後の「放熱・排熱」シーンが特に印象的な3作品をピックアップしてみた。
■リアリティを追求した激アツ演出『機動戦士ガンダムF91』の「MEPE」
まずは1991年に公開された劇場版アニメ『機動戦士ガンダムF91』から、主役機であるガンダムF91がラフレシアとの最終決戦で繰り出した金属剥離効果「MEPE(MEtal Peel-off Effect)」だ。
窮地の中、F91がまさかのフェイスオープンしたことと、「質量を持った残像」により、あたかも分身しているかのように見せながら攻撃したことがとにかく印象的だった。
ガンダムシリーズでは、ニュータイプの能力など、言葉では説明しきれない現象を描いたシーンが多々あるが、この現象には細かな設定がされており、説明を聞くとなるほどと納得してしまう。F91が最大稼働モードで稼働する際に機体の表面温度が急上昇するため、通常の排熱では追いつかず、肩の放熱フィンが最大展開され、頭部コンピュータを保護するためにフェイス部分も展開し、強制排熱を行う……それがフェイスオープンおよびMEPEのメカニズムだ。
F91に搭載されているバイオ・コンピュータが熱に弱いという特性もよく表現されていて、リアリティを追求したためにこそ生まれた神演出と言えるだろう。
ちなみに、この機能は後継機であるクロスボーン・ガンダムにも搭載されていて、長谷川裕一氏によるコミックなどでもその特性を表現したシーンが登場する。
■太正モダンにスチームパンクの息吹『サクラ大戦』の「光武」
次に紹介したいのが、アニメ化や舞台化などのメディアミックス展開もされたセガの大ヒットゲームソフト『サクラ大戦』シリーズだ。
西洋文化と日本文化が入り交じったモダンな街並みや蒸気技術の発達した高度な文明を特徴とする、大正時代を模した架空の「太正時代」を舞台にしたスチームパンク作品で、そこで登場するのが人型の甲冑に霊子機関を搭載した「霊子甲冑」と呼ばれるメカだ。主人公やヒロインたちが搭乗する機体は「光武」と呼称される。
「光武」は蒸気と霊力を動力としているため、メインヒロインである真宮寺さくらの「破邪剣征・桜花放神」をはじめとする各キャラクターの必殺技によるトドメの演出には、蒸気による排熱シーンが数多く導入されている。
世界観とマッチした演出によって機体の特徴が違和感なく表現されているだけでなく、必殺技の余韻も引き立つ演出で、『サクラ大戦』のバトルシーンにおける大きな特徴と言えるだろう。パイロットごとに光武と武器のデザインが異なるので、その演出を見比べて見るのも面白い。
14年ぶりの新作『新サクラ大戦』が2019年に発売され翌年にはアニメ化、2021年に発売された『スーパーロボット大戦30』では主人公の大神一郎や真宮寺さくらが参戦するなど、1996年から続くシリーズの人気は根強い。今後のシリーズ展開も楽しみに待ちたいところだ。