■『Detroit: Become Human』のマーカスの脱出
近年になるとグラフィックの進化により雨の表現は当たり前に使われるようになってきたが、筆者が特にそのすごさを体感したのが、アンドロイドと人間の共存する社会を舞台にした2018年のPS4用ゲーム『Detroit: Become Human』だ。
本作はプレイヤーの行動によって膨大な数の分岐点があり、様々なストーリー展開を楽しむことができる。主人公は3人おり、今回紹介するのはその1人のアンドロイドマーカスのストーリーだ。
マーカスはカールという芸術家として成功を収めた老人のもとで何不自由なく生活していた。ある日カールの私生児レオが金欲しさに留守のカール宅に不法侵入をする。警察を呼ぶが、そのタイミングでカールは病死。マーカスがカールを殺したとレオが到着した警察に嘘を言い、マーカスは警察により解体されてしまう。
そしてマーカスは雨の降りしきるゴミ捨て場から自力で失った自分のパーツを回収し、脱出をする。
雨の表現は前項で紹介したゲームに比べてより三次元的になり、何より進化を感じたのが雨の降りしきるぬかるんだ地面の表現や水たまりの質感。本作は最大60fpsというフレームレートでプレイすることができ、かなり緻密なグラフィックを堪能することができる作品だった。
ゲームが進化するにつれて雨などの天候の変化は、心情描写として効果的に使われることが増えているように思う。たとえば2020年の『ゴースト・オブ・ツシマ』ではプレイスタイルによって天候が変わるというシステムを採用しており、主人公の暗澹たる気持ちを表すかのように雨が降り注ぐ演出があった。
また冒頭で紹介したゼルダシリーズの最新作『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』や、1年9か月で売上が1000万本を越えたNintendo Switchの大ヒット作『あつまれ どうぶつの森』などの最新作では雨が降ると雨宿りをしようとしたり傘をさしたりとNPCの行動が天気によって変わる。グラフィック面だけでなく、そうした可変性のあるゲームキャラクターの行動というのも最新のゲームで進化した要素といえるのではないだろうか。