スポーツ漫画には、主人公にとってのライバルチーム同士の一戦に盛り上がることがある。主役を脅かすほどの存在感を放つキャラたちによる熱戦には、思わずドキドキワクワクとしてしまう。今回は、ライバルチーム同士の名試合に注目して紹介していこう。
■帝王と天才の頂上決戦! 『SLAM DUNK』海南大附属対陵南
まずは井上雄彦氏による名作『SLAM DUNK』での、海南大附属と陵南の一戦だ。インターハイ神奈川県予選の決勝リーグは4チームによる総当たり戦だったが、両者が戦う時点でどちらも1勝ずつ挙げていた。
“事実上の決勝戦”といえる対決では、選手層も厚く「神奈川の帝王」と呼び名の高いキャプテン・牧紳一を擁する海南に対し、キャプテン・魚住純と天才・仙道彰を軸とする陵南が挑む。この試合では、陵南の新たな驚異のスコアラーとして福田吉兆が登場した。
データのない福田は海南にとって厄介な存在であり、仙道がガードポジションを担当し、パスワークに専念するプレイスタイルも見応えがあった。それだけに一進一退の攻防を続けるのだが、さすがに牧も黙ってはいない。魚住にファウルを仕掛け、後半残り約7分の時点で退場へと追い込む。まあ、これは海南のセンター・高砂一馬の隠れたファインプレーといえるだろう。
大黒柱の魚住が退場、また、ディフェンス力に劣る福田を下げたこともあり、仙道の負担が一気に増える。ゲームメイクはもちろん、牧とのマッチアップだけでも相当の負担だからだ。しかし、「それでも仙道なら何とかしてくれる…!!」というチームの期待を背負い、田岡監督はオフェンス面での負担を軽減するために福田を再投入。陵南はここから驚異の追い上げを見せ、2点差まで詰め寄った。
そして、残り時間わずかで池上亮二が牧からボールを奪い、仙道がドリブルでゴールに向かいダンクを決めようとする。追いついた牧だが、咄嗟に「おかしい」と、ブロックをせずに仙道に同点ゴールを許した。
魚住がいないなかでの延長戦は不利だと考えた仙道は、牧にわざと追いつかせてファウルをもらい、ワンスローで逆転を考えていた。そのシナリオを瞬時に考えた仙道も見事だが、それを察知して延長戦を選択した牧も素晴らしかった。
もしも、魚住が退場していなかったらどうだっただろうか……。福田の存在は大きかったものの、やはりそれ以上に牧が一枚うわてだったような気がする。だが、それでも仙道は凄い……。まだ2年ながら終盤に一人で王者海南を苦しめさせたのだから、恐ろしい男だ。
■家族を背負う日向小次郎とチームを背負う松山光が激突した『キャプテン翼』の明和FC対ふらの小
次は高橋陽一氏による『キャプテン翼』の小学生編における全国大会準決勝で実現した、明和FCとふらの小の一戦だ。明和は何といっても、すでに主役のような活躍を見せる日向小次郎のワンマンチーム。一方、ふらの小は雪国で培った厳しい練習量でチームワークを大事にする松山光を軸にしたチームで、両者は対照的なチームだった。
日向のゴールで明和が先制するも、ふらのは松山が身体を張ったプレイでPKを獲得してこれを決めて同点。しかし、このPKも日向のスライディングタックルをわざと利き足に受けて、反則をもらうというちょっと強引な作戦。う〜ん、エース松山だぞ、いいのか監督?
両エースのゴールで2対2の同点となった終盤、明和はハンドでPKを与えてしまう。万事休すとなったところで、“空手キーパー”と呼ばれるGKの若島津健が登場する。この若島津は松山のPKを見事に止め、日向が決勝ゴールを挙げていた。ちなみに初登場時の若島津は異様に脚が長い。それにしても交替させられたGKは可哀そうに思えたな……。
しかし日向はチームの主将としてまとめ上げながら、普段は猛練習にアルバイトで家計を助けるナイスガイ。その負担が出てしまったので、体調に変化が見られた。この試合では、これまで超強気だった日向が挫折を感じる様子や絶望を見せるシーンが印象的だった。
家族を背負う日向とチームを背負う松山。松山は雪国での厳しい寒さのなかでの練習と比べたら、負傷した脚の痛みなどつらくないと言い張っていてそれもスゴいと思ったが……やはり、母親と幼い兄弟たちのために、小6ながらアルバイトで生活費を稼いでいる日向のほうが真似できないものだろう。