「IQエンジン」「カノッサの屈辱」「征服王」90年前後の“とがってた”フジテレビ深夜黄金期の番組たちの画像
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 かつて女子大生ブームを巻き起こした伝説のフジテレビ系深夜番組『オールナイトフジ』が、2023年4月より『オールナイトフジコ』として約32年ぶりに金曜日深夜枠で復活し話題となっている。

 思い返せば1990年代前後のフジテレビ深夜枠は、実験的かつ挑戦的な番組が多かった。1991年にはクイズ番組として異例の深夜枠で『カルトQ』が放送され、第1回の「ブラックミュージック」をはじめ、「B級映画」「ポップアート」「ラーメン」といったそれぞれのテーマに長けたツワモノたちが集まり、そのとんでもない知識量で視聴者を圧倒した。

 こうした深夜番組帯は『JOCX-TV2(※後にJOCX-TV+などに変更)』と総称され、フジテレビが1987年から1996年の間に使用。番組が始まる前、脚の生えたテレビがガシャガシャ歩いて「どんばんは、よなかんばって。」と言うアイキャッチを覚えている人も多いかと思う。そこで今回は、今から約30年前にフジテレビ深夜に放送されていた衝撃的だった番組をいくつか振り返りたい。

■あの俳優たちが演じたVTR問題に頭をヒネる視聴者続出!『IQエンジン』

 まずは、電子音声やCGで描かれた脳など当時としてはインパクトあるオープニングが採用された、1989年に放送されたクイズ番組『IQエンジン』。この番組では一般的なクイズ番組で重要視される知識・記憶などはあまり必要とされず、トンチや機転など「頭の体操」のようなヒネリの入った問題が多いのが特徴的だった。

 明確な司会や解答者は存在せず、視聴者に対してアニメやドラマ仕立ての問題VTRが12問ほど出題される。シンキングタイム前に「こんなことがありえるのだろうか?」……など疑問を投げかけられるが、数秒後の答えに「やられたーっ!」と白旗を上げることがたびたびあった。

 これらVTRでドラマや声を演じたのが、筧利夫さんや大高洋夫さんらが所属していた劇団「第三舞台」。週により「ドラゴンクエストっぽい」ものから「インディ・ジョーンズっぽい」ものなどバラエティに富んだ演出が採用されており、クイズ番組でありながら、答えを知った後も何度も録画ビデオを見返すほどおもしろかった。筆者は人類が滅亡した設定での「地球最後の男がいる部屋をノックしたのは誰?」が印象に残っており、「三人の死刑囚と帽子」は何度答えを聞いても今だ難問だったように思う。

 同番組は当時ベストセラーとなった多湖輝さんによる『頭の体操』シリーズをベースに作られており、当初は同著を参考にした出題だったが、後半は視聴者からも問題を募集。ある意味、今では珍しい視聴者参加型クイズ番組でもあった。

■日本の流行や文化を過去の歴史に置き換えた教養風バラエティ『カノッサの屈辱』

 作曲家・服部克久さんの名曲『夕陽』を使用し、まるで教養番組のような雰囲気だったのが1990年に放送された『カノッサの屈辱』だ。俳優の仲谷昇さんが番組の案内人「教授」役に扮し、視聴者を生徒に見立てながら日本の流行や文化を歴史上の出来事に当てはめ講義(紹介)をする。ちなみに、仲谷教授による冒頭の決まり文句「やぁ皆さん、私の研究室へようこそ」は、当時いくつかのバラエティ番組でパロディ化されるほどの認知度を誇った。

 講義テーマは「アイスクリーム」や「ニューミュージック」など多岐に渡り、内容に沿うよう西太后を模した松任谷由実さんの肖像画を歴史資料のように作る徹底ぶり。1991年3月に同番組が終了した後に、番組で使用した小道具などを展示する「カノッサの屈辱展」が開催され筆者も当時足を運んだが、これらの作り込みの細かさや完成度の高さに驚いた。

 また、番組ではテーマに対しての史実のチョイスも面白かった。例えば日本のホテル文化を取り上げた第1回放送「ホテル四大文明」では、帝国ホテルを有する日比谷を「日比谷エジプト文明」とし、移転前の都庁や国会議事堂などの存在を「肥沃な三ケ(日)月地帯」と称することでエジプト文明に関連付けて解説。当時のお笑いを戦国武将に当てはめた際には、上杉謙紳助(島田紳助)やドリフターズのギャグを称して「東村山文化」などダジャレもてんこ盛りだった。

 特に印象的だったのが、「コミック新大陸の発見と争奪」の回で集英社を「大集英帝国(大英帝国)」、小学館帝国の船(雑誌)を「サンデー・マリア(サンタマリア)号」に見立てた時だ。さらに大人向けの「淫画(インカ)帝国」、少年誌に登場したラブコメ路線を「マゼランブコメ(マゼラン)海峡」に例えるなど、思わず「やられた!」と笑ってしまうほどだった。

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