漫画やアニメにおいて、主人公と対になる存在として欠かせない“ヒロイン”。はつらつと、あるいはおしとやかに……それぞれの個性を活かして活躍する彼女たちだが、なかにはあまりにも型破りな活躍や、驚くべき展開でファンを驚かせたヒロインもいる。
そこで今回は、主人公を際立たせるだけにとどまらない、読者に衝撃を与えたヒロインたちについて見ていこう。
■まさかの“死亡”シーンに衝撃… 『るろうに剣心 ー明治剣客浪漫譚ー』神谷薫
1994年から1999年まで『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載され、のちに実写映画化も果たしたのが、和月伸宏さんによる『るろうに剣心 ー明治剣客浪漫譚ー』だ。2023年7月からは新作アニメが放送される予定で、原作の完結から20年以上経った今なお愛され続けている。
かつて“人斬り抜刀斎”として恐れられ、現在では“不殺”の誓いを立てた剣客・緋村剣心が、数々の剣豪と戦っていく本作。ヒロインは、剣心が居候している神谷道場を営む師範代・神谷薫だ。
巷で噂の美少女の薫は剣の腕前も本物で、父から受け継いだ“神谷活心流”の技を駆使して剣心の仲間の一人として戦っていく。
正義感が強い性格ゆえに自らも前線に立ち、真剣を振るう相手とも対峙するなど、“戦うヒロイン”として活躍していた彼女。しかし物語後半の「人誅編」にて描かれた“とあるシーン”が、当時の読者を絶望のどん底に叩き落とすこととなる。
剣心が、彼に強い復讐心を抱く雪代縁との激戦を繰り広げたときのことだ。数々の猛攻を切り抜け駆けつけた剣心を待っていたのは、なんと頬に剣心と同じ“十字傷”を付けられ、刀によって心臓を一突きにされた薫の“死体”だった。
ヒロインの死というあまりにも救われない展開……に見えたのだが、実はこれ、縁が仕掛けた“偽装工作”だった。彼は本物の薫を誘拐し、代わりに死体を使って作り上げた人形を用意することで、剣心らにトラウマを植え付けようとしたのだ。
随所にその伏線は見られたものの、当時このシーンを見て薫が死んだと思った読者からは、苦情も多く寄せられたという。いくら偽装工作だったとしても、やはり“ヒロインの死に様”という一枚絵は、長らく作品を追いかけたファンたちにとっては耐えがたいものだったようだ。
結果的には生存していたものの、当時のファンに強烈な衝撃を与えたヒロインである。
■「ただの人間には興味ありません」!? 唯我独尊なSOS団団長『涼宮ハルヒ』涼宮ハルヒ
2003年より角川スニーカー文庫(角川書店)より刊行された、谷川流さんのライトノベル『涼宮ハルヒ』シリーズ。その凄まじい人気からアニメ化、映画化を果たしたほか、数多くのスピンオフ作品も展開されている。
シリーズのタイトルにもなっており、メインヒロインとして活躍するのが、主人公・キョンを巻き込んで“SOS団”を立ち上げた涼宮ハルヒだ。
彼女は誰もが認める美少女であるうえ、成績優秀かつ運動能力も高く、料理、楽器演奏、歌唱と何をやらせてもそつなくこなすなど、とにかくスキがない。
だがそんな完璧さとは裏腹に非常にアクが強い性格をしており、一言で言うならば“唯我独尊”タイプ。他者のことを考えず、己の強い好奇心を頼りに突き進むのだ。
彼女が物語冒頭、新しいクラスでの自己紹介で放った「ただの人間には興味ありません」は、作品を象徴する有名なセリフとして知られている。
またこれだけならばただの自己中心的な人物……で済むのだが、ハルヒにはとんでもない秘密があった。実は彼女は“世界を自分の思い通りに操作する”という、まさに神のような力を持っていたのである。
厄介なことに、ハルヒ自身はこの能力に気付いておらず、無意識に世界を上書きしてしまう。つまり仮に彼女が日常を“つまらない”と思えば、そのまま世界が破滅してしまう可能性もあり得るのだ。
そのため、彼女の周囲の人間たち……キョンをはじめとするSOS団の面々は、あの手この手でハルヒの好奇心を満たしていくこととなる。まさに一つの“憂鬱”で世界そのものを消し飛ばしかねない、なんとも破天荒なキャラクターだ。