■回を追うごとにキャラが強烈に… 『おそ松くん』『おそ松さん』トト子
1962年から『週刊少年サンデー』(小学館)などで連載された、赤塚不二夫さんとフジオ・プロによる名作漫画『おそ松くん』。2015年には本作を題材とするアニメ『おそ松さん』が放映され、爆発的な人気作品となったことでも有名だ。
本作では六つ子たちによる破天荒なギャグが展開されるのだが、作中でメインヒロインとして登場するのが、魚屋の娘・トト子である。
彼女は『おそ松くん』時代から美少女として描かれ、普段は六つ子たちにも優しく接している。しかしその一方で意外と腕力が強く、暴力を振るうこともしばしばだ。
そんなトト子の内面が大きく変化しはじめるのが、アニメ版の『おそ松くん』である。漫画版こそ“おてんば”の域を出なかった彼女だが、アニメ版では非常に自己顕示欲が強く、お金にがめつい面まで強調されるようになった。
のちの『おそ松さん』では自他認める美女に成長したトト子だが、性格面はかつてのアニメ版同様に目立ちたがり屋なうえ、腹黒く猫かぶりも激しくなっている。
とくにアイドルデビューした影響か、“チヤホヤされたい”という願望を躊躇なく公言するようになり、そんなところも自身の“魅力”だと捉えているほどだ。またほかの女性の幸せに強烈な嫉妬を抱き、実家の魚に当たり散らすような強烈な場面もあった。
その後も登場回数が増えるのに比例して、やることも徐々に過激になっていくトト子。全裸で迫ってくる六つ子をボディーブローで蹴散らす、砂浜にいたカップルを武器で攻撃する、自身を“魚臭い”と否定した石油王を殴り飛ばす……などなど、最新版の六つ子の成長ぶりに負けず劣らず、実に過激な面が強調されている。
根は優しい女の子ではあるのだが、唐突にボケ役に回ることもあり油断ならないトト子。もともとの“おてんば”っぷりが時を経て進化した、強烈な個性を持つヒロインだ。
物語の主人公同様に、漫画やアニメには個性的なヒロインたちが登場するものだ。なかには主人公のそれを遥かに凌駕するようなインパクトを与え、物語全体を大きくかきまわす場合もある。その衝撃的な立ち振る舞いに、思わず読者・視聴者もたじろいでしまうかもしれない。