■完全無敵のヒーロー! 『ワンパンマン』サイタマ
2009年よりONEさんによってWeb上で連載されていた『ワンパンマン』は、のちに作画を村田雄介さんが手掛けたリメイク版が、『となりのヤングジャンプ』(集英社)にて連載されることとなった。
人々を脅かす“怪人”たちと数々の“ヒーロー”が激闘を繰り広げる今作において、圧倒的な強さを誇るのがほかならぬ主人公・サイタマだ。
目立った特殊能力こそないものの、その実力はまさに“異次元”。怪人からの攻撃が直撃しようとも無傷で生還し、惑星が吹き飛ぶほどのエネルギー波をパンチで吹き飛ばして同時に雲を割ったり、地球から月面まで吹き飛ばされてもジャンプして復帰したり、反復横跳びの風圧だけで相手を薙ぎ倒したり……と、あまりにも人間離れした活躍を見せている。
そんなサイタマの強さの“ルーツ”については、作中での過去エピソードにて描かれている。
彼はもともと、就活に苦悩するどこにでもいる一般人だったのだが、偶然、“怪人”に襲われる子どもを救ったことでかつての「ヒーローになりたい」という夢を取り戻し、そこから三年間、猛特訓を続けた。
とはいえ内容は「スクワット、上体起こし、腕立て伏せを100回ずつと、ランニング10キロを毎日やる」、「1日3食きちんと食べる。朝はバナナでもいい」、「精神を鍛えるために冷暖房を封印」……と、どれも一般的なハードトレーニングと規則正しい生活レベルでしかない。
この程度では到底、異次元の戦闘力は手に入らないだろうが、実はもう一点、作中でとある人物がサイタマの強さの秘密について「生物の持つ成長の限界『リミッター』が外れているから」という考察をしている。上記のような一般的トレーニングに加えて、おそらく数々の怪人との戦いのなかで、少しずつ彼の体内にあるリミッターが解除されていった結果なのではないかというのだ。
並みいる強敵たちをリラックスした姿で“ワンパン”で蹴散らす姿に、見ているこちらまで脱力させられてしまう、なんとも不思議なキャラクターだ。
作中でキャラクターたちが見せつける、圧倒的な“無敵”っぷり。その姿に魅了されるとともに、背後に隠れているルーツを思わず探りたくなってしまう。作中では明らかにされていない部分も多いが、だからこそその部分が読者の想像を掻き立て、より一層、作品に強く没入させられてしまうのだろう。