漫画作品の主人公たちが圧倒的な実力で困難を切り抜けていく姿は、読者を強烈に惹きつける。一方、なぜそこまで彼らは強いのか……その“ルーツ”について気になる場面も多いのではないだろうか。数々の強敵を退けた“無敵キャラクター”たちについて見ていこう。
■“死神”に魅入られたら生き延びる術なし…『ゴルゴ13』デューク東郷
1968年より『ビッグコミック』(小学館)で連載されている『ゴルゴ13』は、漫画界の巨匠、さいとう・たかをさんの代表作品だ。
作中ではタイトルにもなっている「ゴルゴ13」の異名を持つスナイパー、デューク東郷が、凄まじい身体能力と狙撃の腕前、多彩な知識を用いてあらゆるミッションをこなしていく。
彼は狙撃のみならず、その強靭な身体能力や精神力を駆使し、何度も窮地を突破してきた。射撃は0.04秒に1発、銃やナイフを抜く速さは0.17秒と常軌を逸したタイムを弾き出しており、運動能力にも長けていることから、常人だったら生存困難であろう局面においても、難なく脱出して見せる。
また、武器を使わずとも空手、柔術、サンボといった多種多様な格闘技で戦い、常人ならば1カ月で発狂してしまう独房に60日間耐え切るなど、肉体と精神のポテンシャルも常人離れしている。
まさしく“超人”とも呼べるデューク東郷。そんな彼の素性について暴こうとした人間は、彼の手によって次々と排除されてしまっているので明確に正体を暴くには至っていないのだが、作中では幾度となく「ゴルゴ13」の“ルーツ”を探る人物が登場している。
たとえば、ゴルゴに瓜二つな風貌の日本人・東研作、一家を惨殺したとされる殺人犯・芹沢五郎、毛沢東のもとで暗殺の英才教育を受けた男・東郷狂介、シベリアのイルクーツク州に生まれたロマノフ王朝の血を継ぐグレゴリー・皇士・東郷=ロマノフ……など、その“ルーツエピソード”は多種多様。
国籍も時代もいろいろだが、共通点といえば、“殺しの英才教育を受けた“現在のゴルゴに似た風貌”、そして、“東郷、東など名前が似ている”といったところだろうか。
なぜ彼は素性を隠すのか、いったい何者なのか……。危険と分かっていながらも、“死神”の正体を思わず覗き込みたくなってしまう。
■強さはもちろん素性や家族も謎多し…『ゴリラーマン』池戸定治
1988年より『週刊ヤングマガジン』(講談社)で連載された、ハロルド作石さんの『ゴリラーマン』は、とある高校に転校してきた一風変わった高校生と、不良たちが巻き起こす騒動を描いたコメディ色の強いヤンキー漫画だ。
作中で凄まじい強さを誇るのは、タイトルにもなっている「ゴリラーマン」こと、主人公の転校生・池戸定治である。
分厚い唇、広い額、短い髪の毛、いかつい骨格……そのあまりにも“ゴリラ”然とした風貌から転校早々に“ゴリラーマン”のあだ名をつけられた定治。彼の最大の特徴は、とにかく“無口”であることで、作中通して、なんと最終回での一度きりしかセリフを話していない。
そしてなにより、喧嘩の腕前はとにかく常人離れしており、並みの不良ならたやすくまとめて吹き飛ばせてしまう。アッパー一撃で高校生たちが宙を舞い、実力者を裏拳一撃で沈めるなど、同年代が相手であれば怪我を負うこともほとんどない。さらに、落下してきた鉄材が頭部に直撃しても、痛がる様子すら見せずピンピンしているほどだ。
ちなみに、彼の父は過去に世界的に有名な格闘家だったが、一方で定治は“緑帯”を持つ程度に留まっており、格闘技については素人ともいえる。
そもそも、彼の家族は皆同じ顔、かつ同様に無口という妙な共通点があり、一家自体もなかなかミステリアスな存在だ。本当に人間なのか、あるいは“ゴリラ”なのか……その強さのルーツに謎が深まるキャラクターである。