■噴上裕也の敵として恐ろしすぎた鼻

 荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)には、多くのスタンド使いが登場し、それぞれの能力を発揮している。スタンドそのものが特殊な能力だと言えるが、スタンドが本体の能力にまで影響してしまうこともある。その代表格が第4部に登場した噴上裕也だ。噴上のスタンド「ハイウェイ・スター」は相手の匂いを覚えてどこまでも追跡し養分を吸い取るという能力を持つが、それによって、噴上自身も嗅覚が鋭くなっていることが描かれている。

 匂いだけで誰が部屋に入ろうとしているのか、これまで何をしていたのかを瞬時に見抜いてしまっていた噴上裕也。現象だけを見るとまるで名探偵の推理のようだが、それは優れた嗅覚によるものだ。相手を紙にして閉じ込めてしまうスタンド「エニグマ」との戦いでも、噴上は存分にその嗅覚を発揮した。何が飛び出すか分からない、折りたたまれた紙の中身を匂いで察知して、危険を次々と回避していく。それによって、広瀬康一の救出とエニグマの撃破に成功する。

 最初はただのやられ役のようにしか見えなかった噴上が、こういった形で再登場して活躍したのも熱い展開だったし、それが嗅覚を活かした推理というひねりの効いたギミックを活かしたものだったのもユニークだ。

 

 バトル漫画やアニメにおいて、純粋な「強さ」による力比べだけでは一本調子になってしまう。そこに一種のスパイスを加えるのが、訓練だけでは身に付かない動物的な五感の鋭さだ。そして、五感の中でも「嗅覚」の鋭さは、一見戦闘には役立ちそうにないと思ってしまいがちだ。しかし、今回紹介した3人のキャラクターを通して見てきたように、主に危険を回避するという意味で、戦いの場においても充分に役に立つ能力なのは間違いないのだ。

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