ジブリ映画といえば、物語の面白さだけでなく、写実的でありながら幻想的でもある、現実感と非現実感が入り混じった背景美術の美しい景色も魅力の1つと言えるだろう。作品に登場する舞台のモデルであるとされる場所の中には、日本国内に実在するものもある。有名なところでは、『もののけ姫』で描かれた神秘的で雄大な太古の森は、屋久島の白谷雲水峡や白神山地がモデルになったと言われている。
一方、海外、特にヨーロッパの街並みやお城などの建築物にもまた、ジブリ映画の舞台のモデルとなったとされるものが数多く存在する。そこで今回は、ジブリ映画のモデル、もしくは参考にしたとされるヨーロッパの美しい街やお城3選を紹介したい。
■スウェーデン:ストックホルム・ヴィスビー/『魔女の宅急便』
『魔女の宅急便』(1989年)で、魔女がいない街で修行するというしきたりのために親元を旅立ったキキが、修行の地に選んだのが港町・コリコ。このコリコのモデルとなった街こそ、スウェーデンの首都ストックホルムと、バルト海に浮かぶゴットランド島のヴィスビーと言われている。いずれも中世の街並みを残しており、水に囲まれた景観が非常に美しい観光地だ。
物語の序盤、修行する街を探すため、ほうきで滑空しているときに見たコリコの美しい街に、思わずキキが言った「海に浮かぶ街よ! 時計塔よ! こんな街に住みたかったの!」というセリフや、「私、この街にするっ!」と声高らかに宣言したシーンが印象に残っている読者も多いのではないだろうか。
車や路面電車が走り人々が行き交う都会的な市街地は、ストックホルムの街並みによく似た雰囲気で描かれている。石畳の街路や広い道路に等間隔に植えられた木々、カラフルな彩りの建物など、キキが憧れた気持ちがよくわかるおしゃれな景観だ。
一方、キキが住み込みで働くこととなったパン屋さんがある住宅街は、ヴィスビーの街並みにそっくりだ。木組みされた壁やオレンジ系統の色で統一された三角屋根などがおしゃれでかわいらしいだけでなく、緑が多く海も見えることで、温かみのある街として描かれている。
■クロアチア:ドゥブロヴニク/『紅の豚』
「カッコイイとは、こういうことさ。」という糸井重里さんによるキャッチコピーが話題になった『紅の豚』(1992年)の舞台となったのは、美しい大空と海。そのモデルと言われているのが、イタリア半島とバルカン半島に挟まれたアドリア海だ。特に、「アドリア海の真珠」と称されるクロアチアのドゥブロヴニクは、作中の風景によく似ている。
ドゥブロヴニクは、白い壁にオレンジ色の三角屋根で統一された街並みと青い海との対比が非常に美しいリゾート地だ。特に、20メートル以上もの高さの城壁に守られ海洋交易の拠点として栄えてきた旧市街は、1979年に世界文化遺産に登録されている。飛行艇で街の上空を旋回するシーンなどのオレンジ色の三角屋根が映っているシーンがドゥブロヴニクを参考にしたと言われている。
結局、豚になる魔法はそのままに、姿をくらませてしまった主人公・ポルコ。ドゥブロヴニクの美しい街並みから美しい海や大空を眺めてみれば、もう一度彼に会えるかも、と待ち続けるジーナの気持ちもわかるかもしれない。