漫画の世界には、自分が直接手を下さなくても相手を自滅に追い込む幻術による必殺技が存在する。たとえば、岸本斉史氏の人気漫画『NARUTO -ナルト-』(集英社)に登場する“写輪眼”など、次々と繰り出されるカッコ良い幻術技に燃えた読者も多いことだろう。筆者がとくに好きだったのは、仕掛けた相手の精神まで崩壊させるほどの必殺技だった。そこで、おすすめの幻術を扱う漫画キャラを3人紹介していこう。
■圧巻の迫力! 殺意を向けては対峙できない『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』の甲賀弦之介
山田風太郎氏の小説『甲賀忍法帖』を原作とした、せがわまさき氏による『バジリスク 〜甲賀忍法帖〜』(講談社)では、さまざまな忍法を扱う忍者が登場する。なかでも圧巻なのが、主人公で甲賀卍谷衆の次期頭領でもある「甲賀弦之介」だ。
普段は温厚で冷静沈着なイケメンなのだが、甲賀と伊賀の長年における不戦の約定が途絶え、卍谷衆の仲間が伊賀鍔隠れ衆に討ち取られていくと激情し「瞳術」を発動する。
この姿がまた恐ろしく、弦之介がひとたび睨みを利かせると、相手が集団であっても自害や同士討ちに追い込むほどの凄まじさなのである。襲撃する側も目を合わせてはならないのだが、まさに“蛇に睨まれた蛙”のように動けなくなるほどの威圧感……その立ち振る舞いが、なんともカッコいいのだ。
そして、この「瞳術」には一切の慈悲がない。さらに剣術にも優れている弦之介は、瞳さえ封じられなければもはや無敵状態。
ただ、ヒロインながら敵対する伊賀鍔隠れ衆の次期頭領・朧には、まったく殺気がないので通用しないのだ。というよりも、朧は幻術を無効化する「破幻の瞳」を持っているので、弦之介に唯一勝てる存在ともいえる。
それにしても、ラストは悲しい結末だった。弦之介の取った行動も、まともに戦えば自分は勝てないと悟っていたのだろう。比較的話も短いし、作画やストーリーも素晴らしいので子どもたちにも勧めたい漫画なのだが、大人な描写も多いのでなかなか難しいところだ。
■相手の精神を崩壊させる無慈悲な鳳凰幻魔拳! 『聖闘士星矢』のフェニックス一輝
車田正美氏の『聖闘士星矢』(集英社)に登場する、鳳凰星座の青銅聖闘士・フェニックス一輝も凄まじい幻術の使い手だ。
どう見てもアンドロメダ瞬とは兄弟に見えないのだが、主人公の星矢らを助けてくれる心強い兄貴分でもある(初登場時は置いといて)。
さて、この一輝の必殺技は「鳳凰幻魔拳」だ。非情な幻覚を見せ、精神を崩壊させるほどの威力を見せつける。間違いなく、青銅聖闘士のなかで一番戦いたくない相手といえるな。
そして「鳳凰幻魔拳」は無慈悲なほど凄惨な幻覚を見せてくるのだ。相手の恐怖心を増大させるらしいのだが、たいていの敵は「ハアハア…」と言っていて、ちょっと気持ち悪い……。
一輝は格上相手でも動じない精神力が素晴らしく、敵キャラが同じような幻術を使ってもいつの間にかやり返すタフさを持っていた。ただ、唯一効かなかったのが黄金聖闘士シャカだったな。悟りを開いているような相手は恐怖心がないので、さすがに通じないのだろう。
いや〜あのシャカが息を荒くする描写は個人的には見たくなかったので、結果的には良かったな……。