70年代初頭、ブルース・リーやジャッキー・チェンが主演のカンフーアクションが人気を博し、じわじわと香港映画の人気が日本に浸透してきた。その盛り上がりは留まることなく、1980年代は日本でたちまち香港映画ブームが巻き起こり、その影響はゲーム業界にまで及んだ。今回はファミコンで発売されたカンフーゲームのなかから、子どもたちを虜にしたゲームを厳選し、その特徴や思い出とともにいくつか振り返っていきたいと思う。
■子どもがまねしたくなる要素が盛りだくさん『スパルタンⅩ』
香港映画がダイレクトにゲームに影響を与えた最たるものとして挙げられるのが、任天堂から発売された『スパルタンⅩ』ではないだろうか。
1984年に主演・ジャッキー・チェンで公開された『スパルタンⅩ』が元となっている本作。主人公の名前がトーマスと同名であるものの、ストーリー自体は映画とはまったく異なるものとなっている。
シンプルな操作性が子どもでも遊びやすかったのはもちろんだが、印象に残ったのが独特のSEだ。パンチをしたときの「ハッ!」という声を始め、ローキック時の「アチョー!」という声を、学校の休み時間に真似して遊んだ経験がある人は多いと思う。
敵が接近してくるだいぶ前から足を止め、攻撃と回避を同時に行うためのローキックばかりで時間を消費したのも、もはや良い思い出だ。
子どもがとっつきやすい仕掛けが随所に散りばめられていた、カンフーゲームの傑作である。
■終わりなき闘争に明け暮れた『イー・アル・カンフー』
1985年にコナミ(現:コナミデジタルエンタテイメント)から発売された『イー・アル・カンフー』も外せないカンフーゲームの一つだ。
アーケード用対戦型格闘ゲームとしてゲームセンターに並んだ本作は、その数カ月後にファミコンソフトに移植された。放課後にゲームセンターで遊んでいた子どもたちが、ファミコンソフト発売と同時に当時地元に数店舗はあったゲーム屋に駆け込んだのではないだろうか。
2D対戦型格闘ゲームの走りとなった本作は、CPUとの1対1の対戦を無限に繰り返していくというゲーム性だ。プレイするたびに当初の新鮮さが薄れていき、ひたすら無心で目の前の敵をなぎ倒すという状況に「何のために戦っているのか……」と、歴戦の格闘家のような気分にもなってきたものだ。
自分の限界に挑戦するも良し、技の決め方にこだわるも良しと、子どもたちに無限の遊び方を提供した『イー・アル・カンフー』も、忘れてはならない不朽の名作だろう。