■中国武術界の頂点が魅せる究極の“理合”!『バキ』郭海皇
1991年に『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて連載が開始し、今もなお新たなシリーズが描かれ続けている格闘漫画といえば、板垣恵介氏による『グラップラー刃牙』シリーズである。
さまざまなファイトスタイルを持つ闘士たちが登場する本シリーズだが、第2部にあたる『バキ』では、今までのキャラクターを超越するトンデモ老人が登場した。それこそが、146歳という超高齢にして中国武術界の頂点に立つ、郭海皇だ。
見た目は小柄で歳相応の貧弱な肉体をしており、車椅子での移動や咳き込むシーンがあったりと、脆弱な老人然としたキャラクターとして描かれているが、しかしこれらは仮の姿で、その小さな体には彼が辿り着いた究極の“理合”とも呼べる技術が宿っている。
若いころは純粋な“力”を求める巨漢だったのだが、一人の老人に手も足も出ず敗北したことで、身につけたすべてを捨て、“武”を極めるための鍛錬を開始。そして長い年月をかけた結果、肉体を究極的に“リラックス”することで実現する「消力(シャオリー)」と呼ばれる技術に到達した。
これは相手から攻撃を受けたとしても、肉体を弛緩しきることによって衝撃を受け流し、ダメージを散らすというもの。またその応用として、弛緩した肉体を一気に緊張させることで、打撃に凄まじい破壊力を生み出すこともできる。
作中、最強キャラとして有名な範馬勇次郎の打撃を無傷で捌ききり、逆に軽く触れただけで試合会場の石壁を大きくえぐるなど、まさしく“怪物”級の実力を見せていた。
長い武術家人生のなかで、あまりにも人間離れした“武”を手に入れてしまった、驚くべき老人キャラクターである。
“老人”というとどこか弱々しいイメージを抱いてしまいがちだが、漫画に登場するキャラクターたちは、まさしく“達人”と呼べるような圧倒的な実力で観る者を驚かせてくれる。年の功……と呼ぶには、いささかやりすぎなその力や技の数々に圧倒されてしまうこと間違いなしだ。